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社会保険料の当月徴収は違法?翌月徴収との違いと正しいルールを解説

「社会保険料を当月徴収するのは違法では?」という疑問を、給与計算担当者や従業員の方から受けることがあります。結論から言うと、社会保険料の当月徴収そのものは違法ではありません。ただし、控除には法律で定められたルールがあり、これを誤ると「全額払いの原則」違反になる場合があります。

本記事では、中小企業の給与計算担当者向けに、当月徴収と翌月徴収の違い、なぜ違法と誤解されるのか、入社・退社時の正しい扱いまでを法的根拠とあわせて解説します。

当月徴収・翌月徴収とは

社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険)は、月単位で発生します。発生した保険料を、いつ支給する給与から控除するかによって「翌月徴収」と「当月徴収」に分かれます。

  • 翌月徴収:ある月(当月)の保険料を、翌月に支給する給与から控除する方法
  • 当月徴収:ある月(当月)の保険料を、当月に支給する給与から控除する方法

たとえば4月分の保険料を、翌月徴収なら5月支給の給与から、当月徴収なら4月支給の給与から控除します。

原則は「翌月徴収」

健康保険法および厚生年金保険法では、事業主は被保険者に支払う報酬から「前月分」の保険料を控除できると定められています(健康保険法第167条、厚生年金保険法第84条)。

この「前月分を控除できる」という規定を素直に読むと、当月支給の給与から控除できるのは前月分の保険料です。つまり法律が想定している原則的な方法は翌月徴収であり、多くの企業が翌月徴収を採用しているのはこのためです。

では当月徴収は違法なのか

当月徴収(当月発生分を当月給与から控除する方法)は、法律が定める「前月分を控除できる」というルールよりも1ヶ月早く控除している状態になります。これが「違法では?」という誤解の出発点です。

しかし、当月徴収そのものは違法ではありません。ポイントは以下のとおりです。

  • 健康保険法・厚生年金保険法の控除規定は、事業主に控除を認める(権利を与える)規定であって、当月徴収を一律に禁止するものではありません。
  • 実務上、給与計算をシンプルにするため、入社時から当月徴収(当月発生分を当月控除)で運用している企業も存在します。
  • 重要なのは、就業規則や給与規程に控除のタイミングを明記し、従業員に周知していること、そして最終的に控除する保険料の総額が正しいことです。

つまり「当月徴収=違法」ではなく、ルールを定めずに従業員の同意なく不適切な控除を行うことが問題になる、と理解するのが正確です。

「全額払いの原則」との関係

給与からの控除は、労働基準法の「賃金支払いの5原則」のうち全額払いの原則に関わります。社会保険料の控除は法令(健康保険法・厚生年金保険法)に根拠があるため、全額払いの原則の例外として認められています。

ただし、二重に控除してしまったり、本来控除すべきでない月に控除したりすると、結果的に賃金を不当に差し引いたことになり問題となります。当月徴収・翌月徴収のどちらを採用する場合でも、控除のタイミングと回数を正しく管理することが大切です。

賃金支払いの5原則の詳細は「給与支給の間違い、少なく払ってしまった時の対応とは」でも解説しています。

なぜ「当月徴収は違法」と誤解されるのか

当月徴収が違法だと誤解される主な理由は次のとおりです。

1. 法律の原則が「前月分(翌月徴収)」だから

前述のとおり、法律は「前月分を控除できる」と定めています。この条文だけを読むと「当月分を当月に引くのはルール違反」に見えますが、これは控除の原則を示すものであり、当月徴収を禁止する条文ではありません。

2. 入社月・退社月の控除で混乱が起きやすいから

入社直後や退職時に「社会保険料が引かれていない」「2ヶ月分引かれた」といった事象が起きると、従業員が「おかしい、違法では?」と感じやすくなります。実際には控除タイミングのルール(後述)どおりに処理されているケースがほとんどです。

3. 給与明細の控除額と認識がずれるから

翌月徴収の会社では、入社初月の給与から社会保険料が控除されません。このため「引かれるはずのものが引かれていない=何か間違っている?」という不安につながることがあります。これは違法ではなく、翌月徴収の正常な動作です。給与明細の見方については「給与明細の作り方は?必要項目を手順に沿って解説!」もあわせてご覧ください。

入社時・退社時の控除タイミング

社会保険料は「資格を取得した月」から「資格を喪失した月の前月」まで月単位で発生します(日割りはありません)。入社・退社のタイミングで控除を誤りやすいので、ルールを整理します。

入社時(翌月徴収の場合)

状況給与からの社会保険料控除
4月(入社月)4月分の保険料が発生控除なし(翌月に控除するため)
5月5月分が発生4月分を控除(初めての控除)

翌月徴収では、入社初月の給与には社会保険料の控除がありません。「最初の給与で社会保険料が引かれていない」のは正常です。

退社時(翌月徴収の場合)

退職日によって保険料の発生有無が変わります。

  • 月の途中で退職(例:4月20日退職):4月は資格喪失月(喪失日は退職日の翌日4月21日)となり、4月分の保険料は発生しません。最後の給与では前月(3月分)の保険料のみを控除します。
  • 月末日に退職(例:4月30日退職):資格喪失日は5月1日となり、4月分の保険料が発生します。このため最後の給与で2ヶ月分(3月分+4月分)を控除する必要が生じる場合があります。

月末退職時に「2ヶ月分引かれた」のは、この仕組みによるもので違法ではありません。退職者には事前に説明しておくとトラブルを防げます。

当月徴収と翌月徴収、どちらを選ぶべきか

項目翌月徴収(原則)当月徴収
法律の原則合致している原則より1ヶ月早いが禁止ではない
入社初月の控除なしあり
退社月の処理最終給与で2ヶ月分控除が生じることがある毎月当月分を控除するため整理しやすい
採用企業多数(中小企業の多くが採用)一部

特別な事情がなければ、法律の原則どおり翌月徴収を採用するのが無難です。すでに当月徴収で運用している場合は、就業規則・給与規程への明記と、入社・退社時の控除の正確性を確認しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 社会保険料の当月徴収は法律違反になりますか?

いいえ。当月徴収そのものは違法ではありません。法律の原則は前月分を控除する「翌月徴収」ですが、就業規則等にルールを定め、控除総額が正しければ当月徴収も認められます。

Q. 翌月徴収から当月徴収(またはその逆)に変更できますか?

変更は可能ですが、切り替えのタイミングで控除が1ヶ月分抜けたり、二重になったりしやすいため注意が必要です。変更する月の控除設計を慎重に行い、従業員へ事前に周知しましょう。

Q. 入社初月に社会保険料が引かれていないのは間違いですか?

翌月徴収の会社では正常な処理です。入社月の保険料は翌月の給与から控除されるため、初月は控除がありません。

Q. 退職時に社会保険料が2ヶ月分引かれました。違法ですか?

月末日に退職した場合、退職月分の保険料が発生するため、翌月徴収の会社では最終給与で前月分と当月分の2ヶ月分を控除することがあります。これは仕組み上正しい処理で違法ではありません。

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まとめ

社会保険料の当月徴収は違法ではありません。法律の原則は前月分を控除する「翌月徴収」ですが、就業規則等にルールを明記し、控除総額が正しければ当月徴収も認められます。「違法では?」という誤解は、法律の原則が翌月徴収であることや、入社・退社月の控除の仕組みがわかりにくいことから生じています。

給与計算担当者は、次の点を押さえておきましょう。

  • 原則は翌月徴収(前月分を控除)。迷ったら翌月徴収を採用
  • 当月徴収を採用する場合は就業規則・給与規程に明記
  • 入社初月(翌月徴収)は控除なし、月末退職時は2ヶ月分控除が生じることがある
  • 控除のタイミングと総額が正しければ違法ではない

社会保険料の控除タイミングや料率の管理を手作業で行うとミスが起きやすくなります。クラウド給与計算ソフトを使えば、当月徴収・翌月徴収の設定や入社・退社時の保険料控除を自動で処理できます。PayBookは現役税理士事務所が監修し、社会保険料や税金の自動計算に対応しています。まだ給与計算ソフトをお使いでない方は、ぜひ無料トライアルをお試しください。

参考:厚生年金保険料の控除|日本年金機構

参考:賃金の支払い|厚生労働省