【新入社員】所得税・住民税の手続きと給与計算ガイド
新入社員が入社したら、所得税や住民税について事業主はどのような手続きをすればよいのでしょうか。本記事では、給与計算担当者の方が押さえておくべき所得税・住民税の手続きを、扶養控除等申告書の準備から初回給与明細作成までの流れに沿って解説します。
マイナンバーの収集や電子申請(eLTAX)の活用など、現在の実務に即した実践的なポイントもあわせて紹介します。
1. 所得税の手続き
新入社員が御社から支払われる給与に対して課される所得税は、本人が個別に納税するのではなく、給与支給時にあらかじめ控除して預かり、事業主が従業員に代わって納税する「源泉徴収」が法律で義務付けられています。したがって、所得税に関する手続きは、新入社員の初回給与支給より前に準備しておく必要があります。
(1) 扶養控除等(異動)申告書の提出

新入社員が入社したら、事業主は年金手帳(基礎年金番号通知書)、雇用保険被保険者証、源泉徴収票(前職がある場合)など必要書類のほか、身元保証書など個々の事業主が決めている必要書類を提出してもらいます。あわせて「扶養控除等(異動)申告書」の提出も求めます。
扶養控除等(異動)申告書は、本人が扶養する(養っている)親族の有無を申告する書類です。被扶養者がいる従業員の所得税を軽減するため、源泉徴収の計算前に把握しておく必要があります。
提出期限:最初の給与支払日の前日まで(実務上は入社初日に回収するのが標準)
申告書がない場合の影響:源泉徴収税額表の「乙欄」が適用され、税額が大幅に高くなります(実質的に倍以上になることが多い)。原則として全員から提出してもらう運用が標準です。
(2) マイナンバーの収集
2016年1月以降、給与支払報告書や源泉徴収票へのマイナンバー(個人番号)記載が義務化されています。新入社員入社時には、以下のマイナンバーを収集する必要があります。
- 本人のマイナンバー
- 源泉控除対象配偶者のマイナンバー(扶養控除等申告書に記載)
- 控除対象扶養親族のマイナンバー(扶養控除等申告書に記載)
収集にあたっては「番号確認」と「身元確認」の両方が必要です。マイナンバーカード(個人番号カード)1枚で両方を確認できますが、通知カード+運転免許証等の組み合わせでも対応可能です。確認した書類のコピーは安全管理措置に従い適切に保管します。
(3) 所得税の源泉徴収額の算定
扶養控除等(異動)申告書とマイナンバーの収集が完了したら、源泉徴収税額表を使って源泉徴収税額を決定し、給与明細の該当欄に記入して給与支給額を算定します。

本来、所得税は1年分の所得を税務署に申告し、それに対して課税された税額を支払う仕組みです。給与所得以外(事業所得等)については、原則どおり確定申告に基づいて1年分を納税します。
しかし給与所得については、毎月の給与からおおよその年収が見えることから、一括で大金を納める負担をなくすため、毎月の給与から年間税額の12分の1ずつをあらかじめ徴収します。給与支給という「所得の発生源泉」から徴収するため「源泉徴収」と呼ばれます。年末に過不足を清算する手続きが「年末調整」です。
新入社員の基本給与額は雇用契約で確定しています。これに加算される手当を合わせた支給額(社会保険料控除後)と、扶養控除等申告書で判明した被扶養者数を源泉徴収税額表(甲欄)にあてはめ、両方の欄の交わるところがその従業員の源泉徴収税額となります。被扶養者がいない場合は「0人」の欄を参照します。
2. 住民税の手続き
所得税が当年の所得に対して課税される税金であるのに対し、住民税は前年(1〜12月)の所得に対して課税される税金です。新入社員が入社したら、まず前年に所得があったかどうかの確認が必要です。
住民税の納付方法には、本人が直接納付する「普通徴収」と、雇用主が給与から天引きする「特別徴収」の2種類があります。原則として給与所得者は特別徴収が義務です(地方税法第321条の4)。2017年以降、特別徴収の一斉指定が全国的に進められており、ほとんどの自治体で給与所得者は特別徴収が原則化されています。
(1) 普通徴収
普通徴収とは、納税通知書に基づいて従業員が個別に納税する方法です。個人事業主・フリーランス・退職して再就職していない人などが対象となります。
給与所得者が例外的に普通徴収となるのは、次のようなケースに限られます。
- 給与から所得税が源泉徴収されていない者
- 退職予定者または退職した翌年度の住民税が前職給与から特別徴収できない場合
- 常時2人以下の家事使用人のみに給与を支払う事業所
内定者が前職で普通徴収だった場合、特別徴収に切り替えるには「特別徴収切替届出(依頼)書」を居住地の市区町村に提出します。提出期限は市区町村ごとに異なり、納付期限が過ぎている分の切替はできません。
(2) 特別徴収
特別徴収とは、雇用主が従業員の代わりに毎月の給与から住民税を天引きし、まとめて市区町村に納付する方法です。前年所得に対する住民税を、翌年6月から翌々年5月までの12か月にわたって給与から控除します。
特別徴収の流れ:
- 雇用主が1月1日現在の従業員住所地の市区町村に「給与支払報告書」を1月31日までに提出
- 市区町村が給与支払報告書をもとに住民税額を計算し、5月頃に「特別徴収税額決定通知書」を雇用主と従業員双方に送付
- 6月支給給与から納税開始(翌年5月支給給与まで12か月で完納)
近年はeLTAX(地方税共通納税システム)による電子申請が普及しており、一部自治体では電子申請が義務化されています。複数自治体への提出を一括で行えるため、給与計算ソフトと連携した運用が一般的です。
(3) 新卒新入社員の住民税手続き
前職のない人・新卒の新入社員は前年に所得がないため、入社年に支払うべき住民税は0円です。住民税に関しては入社年は手続き不要です。
翌年も在籍する場合、入社年(前年)の所得をもとに上記の特別徴収手続きを行い、6月支給給与から住民税の控除を開始します。
ただし、学生時代にアルバイトで一定額以上の所得があった場合(年間給与収入が概ね100万円超)は、住民税が課税されているため、次項の転職新入社員と同様の手続きが必要になることがあります。
(4) 転職新入社員の住民税手続き
転職者の場合、前職から引き続き特別徴収で納税できるよう手続きを行います。
転職時の特別徴収継続の流れ:
- 前職に「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書(上段)」を作成してもらい、送付を受ける
- 新会社が同届出書の「転勤等による特別徴収届出書」欄に必要事項を記入
- 従業員の住所地の市区町村に提出
- 新会社の初回給与から特別徴収を開始
前職退職時に残りの住民税を一括徴収していた場合や、本人が普通徴収を選択していた場合は、新会社で当年中の特別徴収手続きは不要です。翌年6月から、入社年の所得に基づく住民税の特別徴収が始まります。
手続きで判断に迷う場合は、各市区町村の住民税課に問い合わせて確認しましょう。
3. 入社時に確認すべき他の保険料・税金
所得税・住民税以外にも、新入社員入社時に給与計算で押さえておくべき項目があります。
- 健康保険料・厚生年金保険料:資格取得日に応じた月から徴収開始。標準報酬月額は資格取得時の報酬で決定。
- 雇用保険料:賃金支払の都度、賃金額に応じて控除。
- 子ども・子育て支援金(2026年4月開始):健康保険加入者を対象に、支援金率0.23%(労使折半)を給与から徴収。詳細は【2026年度】子ども・子育て支援金の計算方法を参照。
新入社員入社時のチェックリスト(給与計算編)
- ☐ 扶養控除等(異動)申告書を初回給与支払日の前日までに回収した
- ☐ 本人および被扶養者のマイナンバーを収集し、安全に保管している
- ☐ 年金手帳(基礎年金番号通知書)、雇用保険被保険者証、前職の源泉徴収票を回収した
- ☐ 源泉徴収税額表の甲欄を使って源泉徴収税額を算定している
- ☐ 健康保険・厚生年金の資格取得届を5日以内に年金事務所に提出した
- ☐ 雇用保険の資格取得届を翌月10日までにハローワークに提出した
- ☐ 中途入社の場合、前職からの住民税特別徴収の引継ぎ手続きを行った
- ☐ 2026年4月以降の入社者は、子ども・子育て支援金(0.23%)の対応を確認した
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まとめ
新入社員入社時の所得税・住民税の手続きは、初回給与支給前に準備を完了させることが重要です。特に扶養控除等(異動)申告書の回収漏れは源泉徴収税額が大幅に増えるため、入社初日の必須回収書類として運用しましょう。
また、マイナンバーの収集・eLTAXによる電子申請・2026年4月開始の子ども・子育て支援金など、近年の制度変更にも対応が必要です。給与計算ソフトを活用すれば、源泉徴収税額の自動計算・保険料率の自動更新・給与支払報告書のeLTAX出力まで一気通貫で効率化できます。
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※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づき更新しました。最新の税率・申請方法については、国税庁・各市区町村・年金事務所の公式情報をあわせてご確認ください。