算定基礎届の書き方と提出ガイド【2026年版】中小企業向け
算定基礎届(定時決定)は、毎年7月に届け出る社会保険の重要な手続きです。4月・5月・6月に支払った報酬をもとに、新しい標準報酬月額を決定します。
本記事では、2026年の算定基礎届について、書き方の手順から提出方法、よくある間違いまで、中小企業の給与計算担当者向けにわかりやすく解説します。
算定基礎届(定時決定)とは
算定基礎届は、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額を年に一度見直すための届出です。「定時決定」とも呼ばれます。
基本的な仕組み
- 届出時期:毎年7月1日〜7月10日
- 算定対象:4月・5月・6月に支払った報酬の平均額
- 適用期間:その年の9月から翌年8月まで(1年間)
届け出た報酬月額をもとに新しい標準報酬月額が決まり、それに基づいて9月分からの社会保険料が計算されます。
なぜ定時決定が必要なのか
社会保険料は標準報酬月額に基づいて計算されますが、昇給や手当の変動によって実際の報酬と標準報酬月額にズレが生じることがあります。年に一度見直しを行うことで、実際の報酬に合った保険料負担にする仕組みです。
2026年の変更点・注意点
子ども・子育て支援金の影響
2026年4月から子ども・子育て支援金(支援金率0.23%)が新設されました。算定基礎届の記載方法自体に変更はありませんが、定時決定後の新しい標準報酬月額に基づいて支援金額も変わります。
9月以降に標準報酬月額が変更された場合、健康保険料・厚生年金保険料に加えて支援金の金額も更新が必要です。
子ども・子育て支援金の詳細は「子ども・子育て支援金とは?給与計算での対応方法をわかりやすく解説」をご覧ください。
保険料率改定との関係
2026年度は健康保険料率(全国平均9.90%)と介護保険料率(1.62%)も改定されています。算定基礎届による標準報酬月額の改定は9月から適用されるため、2026年度の新しい保険料率で計算された保険料額が変わることになります。
各変更の詳細は「2026年4月の給与計算で変わること総まとめ」をご確認ください。
対象者と除外者
対象者
7月1日現在で健康保険・厚生年金保険の被保険者であるすべての従業員が原則として対象です。パート・アルバイトで社会保険に加入している従業員も含まれます。
届出が不要なケース
- 6月1日以降に資格取得した人:入社時の届出で標準報酬月額が決まっているため
- 6月30日以前に退職した人:届出時点で被保険者でないため
- 7月〜9月に随時改定(月額変更届)を提出する予定の人:月額変更届が優先されるため
算定基礎届の書き方(項目別解説)
報酬月額の記入
4月・5月・6月に実際に支払った報酬を記入します。ここで注意すべき重要なポイントがあります。
- 「支払った月」で集計する(計算対象月ではなく、実際の支給月)
- 例:3月分の給与を4月に支給 → 4月の報酬として記入
報酬に含まれるもの・含まれないもの
| 報酬に含まれる | 報酬に含まれない |
|---|---|
| 基本給 | 臨時に受けるもの(結婚祝金等) |
| 残業手当・深夜手当 | 年3回以下の賞与(標準賞与額で別途届出) |
| 通勤手当 | 出張旅費・実費精算の交通費 |
| 役職手当・家族手当 | 解雇予告手当 |
| 住宅手当 | 退職金 |
| 現物支給(食事・住居等) | 年4回以上の賞与(報酬に含める) |
通勤手当は所得税では非課税限度額まで非課税ですが、社会保険料の算定では全額が報酬に含まれます。見落としやすいポイントです。
支払基礎日数のルール
算定基礎届では、支払基礎日数が17日以上の月のみを算定対象とします。
- 月給制:暦日数(欠勤控除がある場合は就業規則の所定労働日数から欠勤日数を引いた日数)
- 日給制・時給制:出勤日数
3ヶ月すべてが17日未満の場合は、15日以上17日未満の月で算定します。
| 月 | 支払基礎日数 | 算定対象 |
|---|---|---|
| 4月 | 22日 | ○ |
| 5月 | 14日(欠勤多数) | ✕ |
| 6月 | 21日 | ○ |
この場合、4月と6月の2ヶ月の平均で算定します。
具体的な計算例
月給30万円・通勤手当1.5万円の従業員の場合:
| 月 | 基本給 | 残業手当 | 通勤手当 | 合計 | 支払基礎日数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | 300,000円 | 25,000円 | 15,000円 | 340,000円 | 22日 |
| 5月 | 300,000円 | 18,000円 | 15,000円 | 333,000円 | 20日 |
| 6月 | 300,000円 | 30,000円 | 15,000円 | 345,000円 | 21日 |
3ヶ月の平均:(340,000+333,000+345,000)÷ 3 = 339,333円
この金額をもとに標準報酬月額が決定されます。健康保険・厚生年金保険の等級表で339,333円は標準報酬月額34万円(22等級)に該当します。
提出方法と期限
提出期限
2026年の算定基礎届の提出期限は2026年7月1日(水)〜7月10日(金)です。届出が遅れると、正しい標準報酬月額が9月から適用できない場合があるため、期限内に提出しましょう。
紙での提出
管轄の年金事務所に、算定基礎届の用紙に記入して提出します。用紙は年金事務所から届く届出用紙を使用するか、日本年金機構のサイトからダウンロードできます。
電子申請(e-Gov・GビズID)
e-Gov電子申請システムまたはGビズIDを使って電子申請も可能です。窓口に出向く必要がなく、届出の控えもデータで保管できるため効率的です。
よくある間違いと注意点
4月昇給の反映忘れ
4月に昇給した場合、昇給後の金額が4月に支払われる給与に反映されているか確認しましょう。「月末締め翌月払い」の会社では、4月の昇給は5月支給の給与から反映されるため、算定対象月の報酬額を正確に把握する必要があります。
残業手当の計算期間ずれ
算定基礎届に記入するのは「4月・5月・6月に支払った」報酬です。3月の残業代が4月の給与に含まれている場合、それは4月の報酬として計上します。計算期間ではなく支払月で集計する点に注意してください。
パートタイマーの支払基礎日数
パート・アルバイト(短時間就労者)の場合、支払基礎日数が17日以上の月がない場合は、15日以上17日未満の月で算定します。すべての月が15日未満の場合は、届出書の備考欄に「◯月◯日〜◯月◯日まで病欠」等の事由を記載します。
有給休暇取得日の扱い
有給休暇を取得した日は、支払基礎日数に含まれます。有給休暇中は給与が支払われるため、出勤日と同様にカウントします。
算定基礎届の準備スケジュール
| 時期 | 対応事項 |
|---|---|
| 4月〜6月 | 毎月の給与データを正確に記録(残業手当・通勤手当含む) |
| 6月下旬 | 4〜6月の報酬月額と支払基礎日数を集計 |
| 7月上旬 | 算定基礎届を記入・提出(7月1日〜10日) |
| 8月下旬〜9月 | 年金事務所から「標準報酬月額決定通知書」が届く |
| 9月分〜 | 新しい標準報酬月額で社会保険料を計算開始 |
まとめ・チェックリスト
算定基礎届は毎年の定例業務ですが、報酬の集計ミスや支払基礎日数の扱いを間違えると、1年間にわたって誤った保険料を徴収してしまいます。以下のチェックリストで確認しましょう。
- ☐ 4月・5月・6月に「支払った」報酬額を正確に集計した
- ☐ 通勤手当を報酬に含めた
- ☐ 残業手当は支払月で集計した(計算対象月ではない)
- ☐ 支払基礎日数が17日未満の月を除外した
- ☐ 4月昇給の反映が正しい月の報酬に含まれている
- ☐ 現物支給(食事・社宅等)がある場合は報酬に含めた
- ☐ 届出除外者(6月1日以降の入社者等)を確認した
- ☐ 7月10日までに届出を完了した
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