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社員が退社したときに必要な手続きとは? - 社会保険、年金編

広義の社会保険である健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険のうち、後二者は手続き上、労働保険として扱うとわかりやすいため、ここで社員の退社手続きとして説明する社会保険は、健康保険、介護保険、厚生年金保険を対象とします。

ただし、介護保険は健康保険と一体化していますので、具体的には、社員が退社する場合の社会保険については、健康保険と厚生年金保険の手続きをすればよいのです。また、これら両保険はいっしょに手続きを行います。事業所によって健康保険組合に加入している場合には健康保険のみ組合に届ければ結構です。

1. 具体的には何をするの?

社会保険に関する具体的な退社手続きとしては、資格喪失日から5日以内に「健康保険厚生年金 被保険者資格喪失届」を提出します。これには退職者から回収した健康保険証の添付が必要です。提出する先は所轄の年金事務所です。

「健康保険厚生年金 被保険者資格喪失届」の用紙には、マイナンバー制度の導入によって、当該退職者の個人番号と御社の法人番号の記載欄が増設されていますので、その記入も必要です。
また、退職者が70歳以上で健康保険被保険者であった場合には、「厚生年金保険70歳以上被用者 該当・不該当届」も同時に提出する必要がありますので注意が必要です。

(1)資格喪失ってどんな意味?

被保険者資格喪失届には、「資格喪失年月日」を記入する欄があります。この資格喪失とは、事実上雇用関係が終了したことを意味します。たとえば病気を理由に休職し、給与も止まった状態で、治療が長引きそうで退職の目途がたっていないような場合、また他の理由で復職の見込みがないような求職者の場合には、まだ雇用契約の途中であっても事実上雇用関係が終了しており、資格喪失となるのです。

(2)資格喪失日は間違いやすい

資格喪失日は退職した日だと誰もが考えますが、実際に届に記入する資格喪失日は違いますので、注意しましょう。この資格喪失の日付は、給与からの保険料控除額や、退職者が将来給付を受ける年金額などに影響しますので、ミスをできないところです。

退職の場合は御社と退職者の雇用関係が終了した翌日の日付です。退社理由が死亡の場合も死亡日の翌日が資格喪失日です。ちなみに、被保険者の適用除外者となったらそれも除外の翌日、会社の廃止の場合も廃止の翌日、また厚生年金保険については健康保険より早く適用除外となりますので70歳に達した日、具体的には70歳の誕生日の前日が資格喪失日です。

(3)月末の日に退職したら?

社会保険料は資格喪失した月の前月分までを納めるきまりです。たとえば退職者が3月31日に退職したら、(2)で説明した通り、この退職者の資格喪失日は翌日の4月1日になります。そうすると3月は資格を喪失していませんので、3月分の保険料の納付が必要です。そのため、月末退社の場合にのみ、通常通りの前月分の保険料に加えて当月分の保険料も控除してよいことになっています。

これに対して3月30日が退社日だったらどうでしょう。3月31日に資格を喪失するので、保険料は2月分まででよく、たった一日の違いで保険料は一か月分違ってくるのです。

2. 退職者には退職後の説明をしてあげましょう

退職者は、退職とともに社会保険の資格を失います。保険証は会社に返還し、これまで1割でよかった病院代も国民保険に入っても3割負担、そんな手続きを知らない場合には全額負担、つまり会社員だったときの10倍の医療費を負担することになってしまいます。実際には病院にいけば役所で国民健康保険に入ってきてください、とアドバイスしてくれるでしょうが、体調の悪いときに役所まで行くことから始めるというのでは大変です。

健康保険には実は、退職したあとも同じ保険給付を受けられる、健康保険任意継続という制度があり、社員の退職後の暮らしに大いに安心を与えてくれるものです。そんなアドバイスを退職時にしてあげたら、より親切で御社の株は急上昇まちがいなしです。

(1)健康保険についてのアドバイス

すぐに再就職する人は手続きも不要で、新しく入社した会社に手続きを任せます。すぐに就職しない人や、就職先で健康保険に加入しない人の場合には、病院にかかるときのために3つの方法が選択できます。まずは上記の「健康保険任意継続」です。出産や傷病手当を除く給付が受けられ、引き続き最長2年間加入できます。

ただし退職後20日以内に全国健康保険協会で手続きをしないと継続できなくなります。保険料は給与から控除されていた額の2倍です。もうひとつは「国民健康保険」です。市町村窓口で加入手続きができますが、保険料は前年度の所得をもとに計算されますから、任意継続の場合とどちらが得かは、窓口で確認するとよいでしょう。最後は家族の「扶養家族として健康保険にはいる」方法です。

(2)年金についてのアドバイス

年金もすぐに再就職するならばその就職先で手続きをしてもらえるので何もしなくてかまいません。そうでない場合には、20歳以上60歳未満なら市町村窓口で「国民年金」に加入手続きをします。配偶者を扶養しているならば配偶者も同時に加入手続きをします。失業中なら保険料支払いの免除などもあるので窓口で確認しましょう。すでに年金を貰っているならば手続きは不要です。それ以外では、「厚生年金・共済年金加入社の被扶養配偶者」になることです。

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