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給与計算、社会保険と税金の知識

給与明細の記載項目一覧と失敗しないテンプレートの選び方

給与明細の記載事項は法律で定められているため、不十分な給与明細を作成してしまうと法律違反となってしまいます。初めて給与明細を作る場合や、今使っているフォーマットが十分なのかどうか不安に感じることも多いでしょう。

このページでは給料明細に記載しなければならない項目と、それを全て網羅したテンプレートを、そしてミスなく簡単に作成する方法についてお伝えします。

給与明細の記載項目は3つのカテゴリに分かれている

給与明細の記載項目は「勤怠」「支給」「控除」の3つの項目に分かれており、その全てを記載する必要があります。
「勤怠」に給与計算のベースとなる勤務状況を記載します。「支給」には従業員に対して支払うお金を記載します。「控除」は所得税や保険料など天引きする項目を記載します。

それぞれの項目について詳細に解説していきます。

勤怠に関する項目

勤怠に関する項目には出勤日数や欠勤日数などを記載します。記載義務のある項目としては「期間」「労働日数/時間数」「延長労働時間数」「休日労働時間数」「深夜労働時間数」と多くはありません。これらは全て給与支給額を計算する上で必要となる情報です。

それだけでは従業員にとって情報として不十分ですので実際は以下のような項目が記載されることが一般的です。

所定就労日 会社が定める出勤日数
出勤日数 出勤した日数
欠勤日数 欠勤した日数。有給休暇などの休暇ではなく、欠勤なので給料が支払われない場合に記載する。
実労働時間 実際に働いた時間数
残業時間 出勤日数×所定労働時間または法定労働時間(1日8時間)を超えて労働した時間を記載。
深夜残業時間 午後10時~午前5時の残業時間
休日出勤日数/時間 就業規則で定める休日や、労働基準法で定める休日に出勤した時間または日数
有給休暇日数 有給休暇を取得した日数
特別休暇日数 就業規則で定める特別休暇などに該当する日数
有給残日数 有給休暇の残り日数
遅刻/早退日数 遅刻または早退をした日数。

所定就労日数、休日、特別休暇や遅刻・早退の取り扱いについては就業規則に記載されている内容との整合性が求められます。

労働基準法で定められている休日や労働時間と、就業規則で定められている休日や労働時間が異なるケースもありますので、自社の実態に合わせて計算方法を変えていくこととなります。また、項目の名称も会社によって異なる場合があります。

この勤怠に関する項目が記載されていることにより、給料を受け取る従業員は自分の支給額が正しいかどうか、記録が正しいかどうかを判断することができます。また、有給残日数を把握することもできます。法律に定められた記載内容を満たすというレベルを超えて、従業員が安心できるという視点で項目を追加していくのが望ましいでしょう。

支給に関する項目

支給に関する項目には従業員に対して支払う給与、手当などを記載する項目です。就業規則や労働契約などで定められている基本給の他に、残業代や各種手当、通勤手当などを記載することとなります。一般的には以下のような内容になります。

基本給 雇用契約書や労働条件通知書で定められた基本給。
残業手当 残業時間(時間外労働時間)に対する手当。固定残業手当(みなし残業代)として一定時間分を固定額で支給している会社もあり、そのような場合はみなし残業時間以下のばあいは固定額、みなし残業時間を超える場合は固定額に追加して超過した時間に対する残業代が支払われます。法定労働時間である1日8時間、または週40時間を超えて働いた場合は25%の割増賃金を支払う必要があります。
休日労働手当 休日労働に対する手当。35%の割増賃金を支払う必要があります。
深夜労働手当 深夜残業に対する手当。25%割増賃金を支払う必要があります。
通勤手当 通勤にかかる定期券などの費用です。
その他各種手当 役職手当、資格手当、皆勤手当、住宅手当などの就業規則に定められた手当がある場合は記載します。

時間外動労や深夜労働、休日労働に対しては法律で割増賃金を支払うことと定められています。勤怠の項目では各労働時間を明示し、支給の項目でそれぞれの時間に対する支給額がわかるように明示する必要があります。

控除に関する項目

控除に関する項目には税金や社会保険料を記載します。これらの項目はどれも法律で定められた記載項目であり、そしてほぼすべての項目が強制加入項目となっています。加入漏れや支払い漏れのないように注意しましょう。

所得税 所得に応じた累進課税税率に合わせて給与から概算で源泉徴収を行い、その金額を記載します。
住民税 前年の所得に基づいて計算された金額を控除し、記載します。
健康保険 加入している健康保険組合の標準報酬月額表により金額が決定します。
介護保険 40歳以上の全員が負担する必要があり、こちらも加入している健康保険組合と標準報酬月額により金額が決定されます。
厚生年金 標準報酬月額により金額が決定されます。
雇用保険 給与総額に「雇用保険料率」をかけて計算されます。なお、一部の事業(農林水産、清酒製造、建設)は雇用保険料率が他の業種と異なるため要注意です。
その他控除項目 財形貯蓄や従業員持株会、組合費などその他の控除項目があれば記載します。

所得税、住民税については全従業員が対象となります。

健康保険と厚生年金については、なお、一定の基準を満たすアルバイトや、雇用主が個人事業主の場合は加入義務がない場合もあります。雇用主が法人の場合は、正社員は全員、アルバイト・パートも正社員の75%以上労働する方であれば加入義務があります。

また、雇用保険については1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある人を雇い入れた場合は対象となります。

詳しくは厚生労働省「人を雇うときのルール」にわかりやすく書かれています。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/koyou_rule.html

給与明細のテンプレートの選び方

給与明細のテンプレートは検索をすればたくさん出てきますが、会社にあった項目に項目を変更できないものは使うことができませんし、項目が不十分なものを使ってしまうと必要な情報の記載漏れに繋がります。

テンプレートを利用する場合は、以下の点に注意して選ぶようにしましょう。

  • 必要事項がもれなく記載されているかどうか
  • 自社に合わせた形で項目名などが変更できるかどうか、項目数は適切か
  • 自動計算機能がある場合、最新の法改正に対応しているか

ほとんどのテンプレートはエクセルのファイルとなっているため、項目名などは自社の実態に合わせて変更できますが、空欄が多すぎたりするのも考えものですよね。

計算式が設定されており税金や社会保険料などを自動計算するものはとても便利ですが、控除の計算式などは毎年のように法改正が行われておりますので、1年古い計算式を使っただけで法律違反となってしまいます。ですので、計算式が入ったテンプレートを使用する場合はその計算式の対応年月に注意が必要です。

毎回「前月のテンプレートをコピーして使っている」という方は、法改正のタイミングでテンプレートの入れ替えが必要になります。

なお、給与明細は給与計算ソフトを活用することで簡単に作成することもできます。もちろん法律で定められている項目は全て網羅されていますし、面倒な計算をする必要も一切ありません。もちろん、法改正等によるアップデートも対応しており気にする必要がありません。

ずっと無料で使用することのできるツールも増えてきておりますので、まずは試しに使ってみるのも良いでしょう。

最後に:関連法規について

給与明細に記載する項目、支給や控除を行う内容については以下の法律で規定されています。曖昧なまま業務を進めているのであれば、一度読んでみるのもよいのではないでしょうか。

加入する必要のある保険などの説明は厚生労働省「 人を雇うときのルール  」に詳しくまとまっているので、こちらを参考にすると良いでしょう。

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