給与計算ラボ

給与計算、社会保険と税金の知識

労働保険を計算してみよう1 労災保険の計算

給与計算上、労働保険とはここでは労災保険と雇用保険のこととします。そのうち労災保険の保険料の計算について説明します。

自社で働いてくれている従業員が仕事中に万一のことがあった場合に、会社は従業員にその医療費その他の補償をしなければなりません。かすり傷で病院で消毒をした、という程度でしたら会社の負担は少額で済みます。とはいっても健康保険証は使えませんので医療費は100%会社が負担することになります。

これが重症や、死亡、また後遺症が残ったような場合に会社は従業員または遺族に莫大な補償を負担することになります。大企業でない限り会社が破産する心配があります。

そこで会社は労災保険に加入し、保険料を支払っておくことで、従業員に補償をする必要が生じた時に労災保険の給付金で補償をすることができるのです。自動車の自賠責保険と同じように考えるとわかりやすいでしょう。

ここまでの説明でわかる通り、労災保険は会社が加入するものです。ですから保険料は会社が支払います。これに対して雇用保険や社会保険は、社員が自分のために加入する者ですから給与から控除されて個々に支払っているのです。

では、従業員のために労災保険はいくら支払うべきなのか、その保険料を計算してみましょう。算出手順は以下1~5の順序となります。最後の算出手順5で算出した今期納付額が年度更新時に実際に申告し納付する労災保険料となります。

算出手順1:⑱申告済概算保険料額(前年度)-⑩確定保険料額(前年度)

(1)年度更新が必要です

労災保険料は、保険年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)中に支払われた給与の総額に保険料率をかけて算出します。しかし、途中で給与の増減や退職などもあり得ます。ですから、当年度に支払われるだろうという給与見込の総額をもとに申告して納付することになります。翌年3月に実際の給与総額が明確になったら、過不足分を調整して清算します。従業員が所得税について年末調整するのと同じ方法ですね。

そういうわけで毎年度ごとに労働保険の申告と納付の手続きをする必要があり、この手続きを「年度更新」といいます。
保険料率は、会社の業種によって一元的用事業・二元的適用事業に分かれ、また仕事内容によって継続事業と有機事業に分けて決められます。多くは一元的用事業で継続事業に当たりますので、その前提で説明します。

(2)手続き前の準備をしましょう

五月下旬に都道府県労働局から「労働保険概算・確定保険料申告書/(石綿健康被害救済法)一般拠出金申告書」が送られてきます。記載内容に誤りがないかチェックしてください。

また、前もって前年度に作成した「労働保険 確定保険料算定基礎集計表」をチェックして、入社・退職者や給与支払い実績を確認します。これをもとに、今年の「労働保険 確定保険料算定基礎集計表」を作成するのですが、特にフォーマットは決まっていません。エクセルなどで自由に作って置けばよいでしょう。

こうして作っておいた集計表を基礎に、前年度の確定保険料を算出し、前年度の確定保険料を出します。そして本年度の概算保険料を出して、「労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書」に記入します。
そしてようやく本年度の「確定保険料申告書」を記載することができます。

(3)最初に出すべき数字は?

最初に出すべき数字が算出手順1:⑱申告済概算保険料額(前年度)-⑩確定保険料額(前年度)というわけです。

算出手順2:手順1でプラスが出たら⑳(イ)充当額へ マイナスならば⑳(ハ)不足額へ

(1)プラス数字がでたら?

算出手順1の(3)で計算した数字がプラスの場合は⑳の(イ)充当額に記入します。
これは前年度に申告した保険料が実際に確定した給与で計算した保険料よりも多かった場合です。つまり見込みで払っておいた保険料が多すぎたのですから、還付してもらうことができます。還付してほしいときは⑳(イ)充当額ではなく、(ロ)還付額に記入します。(イ)充当額に記入しておけば本年度に支払うべき保険料に充当されますからその分本年度の支払い額が減ります。

(2)マイナス数字が出たら?

マイナス数字だった場合には前年度の保険料が確定給与で計算した実際の場合よりも足りなかったということですから、本年分に足して支払うことになります。マイナス数字でしたら⑳(ハ)不足額に記入しますが、その場合マイナスはつけなくて結構です。正数に直して記入しましょう。

算出手順3:概算保険料額(本年度)を㉒「全期または第1期(初期)」(イ)へ

概算保険料額(本年度)を㉒「全期または第1期(初期)」(イ)に記入します。これは申告書の⑪欄において、給与総額見込額に保険料率をかけて、すでに雇用保険料と合算されています。

算出手順4:㉒の(イ)から(ロ)(ハ)を加減し(ニ)今期労働保険料へ

㉒「全期または第1期(初期)」(イ)に算出手順3で数字が記入されていますから、この数字に(ロ)は足して、(ハ)は引いて、差し引きの金額を㉒(ニ)今期労働保険料に記入します。

算出手順5:(ニ)今期労働保険料+(ホ)一般拠出金を(ヘ)今期納付額へ

確定保険料申告書の上三分の一ほどの部分に「確定保険料算定内訳」欄があります。その欄の(へ)の数字を㉒(ホ)一般拠出金に記入します。㉒(ニ)今期労働保険料に(ホ)一般拠出金を足して(ヘ)今期納付額へ記入します。これが御社が本年度に申告・納付する労働保険料となります。ちなみに㉒(ホ)一般拠出金は石綿による健康被害者の救済に関する法律に基づいて被害者救済のために徴収されている労災保険料です。

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