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有給休暇の付与日数は?「労働基準法」における8つのルール

企業が従業員に対して付与義務のある年次有給休暇は、労働基準法によって定義されています。有給休暇が付与される条件や、付与日数の決め方などが規定されているため、法律に基づいた対応が必須です。
また働き方改革関連法案により、2019年4月から有給休暇の取得義務が新たに設けられました。
本記事では、労働基準法における有給休暇の定義や内容について詳しく解説します。

労働基準法における有給休暇8つのルール

1、有給休暇の定義

有給休暇とは、正式には「年次有給休暇」と言い、会社を休んでもその日分の給料が支払われる休暇のことです。

労働基準法第39条で労働者の権利として定められており、業種・業態に関わらず、また、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態も関係なく、一定の条件を満たせば誰にでも与えられる権利です。

2、有給休暇の付与要件

年次有給休暇を付与する条件は法律により定められており、労働基準法内で「雇い入れ日から6ヵ月継続して勤務し、全労働日の出勤率が8割以上」である場合に10日以上を付与しなければならないとしています。
付与された10日間の有給休暇は連続して取得することも、分割して取得することも認められています。

労働基準法第39条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

引用:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049#232

また、条文内で触れられている「雇入れの日」とは、一般的にその会社に入社した日のことを指します。また、「全労働日」とは、会社が就業規則で定める所定労働日数のうち、有給休暇の対象期間の労働日の合計を指します。

「全労働日の日数÷従業員の出勤日数」を計算し、出勤率が8割を超えている場合に有給休暇が付与されます。

3、付与日数の定め方

労働基準法39条にもとづく原則的な有給休暇付与日数は、以下に該当する場合、表1の通りとなります。

週の所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上の一般労働者
1年間の所定労働日数が217日以上の労働者

表1

有給休暇 アートボード 1 のコピー 6

法律で定められた10日分の有給休暇に加えて、雇入れの日(入社日)からの勤続年数に応じて増加します。基本的には最初の付与から1年経過するごとに11日、12日と1日ずつ増加し、勤続年数3年6ヵ月以降は2日ずつ付与日数が増えていきます。

一方、パートやアルバイトなど週の所定労働時間が30時間未満の労働者の有給取得条件と日数は、表2の通りです。

表2

有給休暇 アートボード 1 のコピー 4 (1)

4、半日単位・時間単位での付与も条件付きで可能

有給休暇は原則として1日単位で取得してもらう必要があります。しかし、あらかじめ従業員と合意している場合、半日単位・時間単位で取得してもらうことも可能です。(時間単位の場合は労使協定の締結が必要)

例えば、病院に行く従業員が午前休・午後休を取得することや、数時間の休暇を取得して出勤を遅らせる場合があります。ただし、分単位での有給休暇の付与は認められていません。
また、半日単位・時間単位で取得できる有給休暇の日数は、労働基準法第39条4項で、年5日に制限されています。

5、原則従業員が指定した日に与える

有給休暇は原則として、従業員が指定した日に付与する必要があります(労働基準法第39条5項本文)。これを有給休暇の「時季指定権」といいます。
ただし、請求された時季に与えることで、事業の正常な運営が妨げられると具体的・客観的に評価される場合に限り、事業者側が取得時季を変更することができます。この権利は「時季変更権」と呼ばれます。

この時季変更権の行使は単に繁忙期だとか人手不足であり、その従業員が休んだら困るといった理由だけでは認められません。事業者が代替勤務者を配置するなど対応処置を講ずる必要があり、それをぜずに指定した日の有給取得を拒むことは違法であるとされています。

6、年5日の有給休暇取得が義務化

2019年4月に働き方改革関連法案が施行され、年に10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、有給休暇が付与される基準日から1年以内に合計5日分の休暇を取得させることが義務化されました。これは、管理監督者や、有期雇用労働者も対象となります。

また、有給休暇の取得義務化にともない、有給休暇を年10日以上取得したすべての従業員に有給休暇管理簿を作成し、年に5日以上取得できているかを管理することも義務付けられました。有給休暇管理簿は作成した後、3年間の保管も義務付けられています。

参考:厚生労働省「年次有給休暇取得管理台帳(xlsx)」

7、有給休暇の計画的付与

年次有給休暇は「計画的付与」が可能です。これはあらかじめ労使協定を締結することにより、雇用者が有給休暇を与える日にちを指定する制度です。
たとえばGWやお盆休みで法定休日となっていない日に社内の労働者に一斉取得させることで会社全体を休みにしたり大型連休を実現したりすることができます。
ただし労使協定による計画的付与の対象となるのは、年次有給休暇の日数のうち、5日を超えた部分となります。年次有給休暇の日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりません。

参考:厚生労働省|年次有給休暇の計画付与制度

8、時効期限と買取に関して

年次有給休暇の請求権には「時効」があるので注意が必要です。
現在の法制度においては2年で時効消滅します。1年で消化しきれなかった有給休暇には「繰越」が認められますが、繰り越しても2年で時効にかかるので、それ以上の累積は会社が特に認めていない限り不可能です。
会社の有給買取に関しては、厚生労働省でも『年次有給休暇の本来の趣旨である「休むこと」を妨げることとなるため、買い取りは法律違反となります。』という明記があるため、原則違法です。
ただし、退職時に未消化となっている残日数に応じた金銭を会社が任意で給付することは可能です。

参考:厚生労働省|有給休暇の付与日数

9、有給休暇の法律に違反があった場合の罰則

年次有給休暇の取得は労働者の権利であり、労働者から請求があれば会社は必ず休暇を与えなければいけません。取得させなかった社員がいた場合、労働基準法違反となり、6か月以下の懲役または違反者一人につき30万円以下の罰金刑があります。
「罰則になるなんて知らなかった」とはならないようにしっかりと把握するようにしましょう。

まとめ

今回は、労働基準法における年次有給休暇の定義や要件を解説しました。
有給休暇は労働基準法第39条において細かく規定されており、複雑な仕組みとなっているため、正しく理解する必要があります。
法律にかかわることなので、「知らなかった」では済みません。
勤怠管理システムの導入なども行い、適切な有給休暇の管理をおこないましょう。

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