給与計算ラボ

業種別の給与計算の注意点

介護施設、ケアハウスの給与業務 - 人材確保の難しい業界の給与計算

多様な雇用形態によるスタッフの構成

ケアハウス・介護施設の給与計算の特徴としては、まず、多様な雇用形態があげられます。常勤職員、パートタイマー、契約職員、派遣職員等、様々な種別の労働者の方が同じ職場で働きます。これらの方々は、その種別によって賃金の決め方が異なりますし、雇用期間も違います。

また、賃金以外の賞与や退職金、福利厚生についても通常はその職員の種別により異なっています。したがって、これに対応して心掛けることとしまして、それらの種別の特徴をよく把握して、適切に賃金や手当の決定することが大切です。

長期的な勤務が前提の常勤職員と、短期的な勤務が前提のパートタイマーでは、おのずと責任が異なりますから、賃金や福利厚生面で違いが生じるのは当然ですが、パートタイム労働法により、正社員とパートタイマーの待遇に相違がある場合には、その相違は職務内容、人材活用の仕組み、その他の事情から考慮して不合理な場合には認められないとする規定がありますから、待遇に差を設ける場合にも、合理的な理由を説明できるようにしておかなければなりません。

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人材確保の難しさと入社、退社の多い職場

次の特徴として、人材確保の困難さがあります。この介護業界は、肉体的にも大変な仕事であることから、人手の確保が難しいと言われております。また、離職率も決して低くなく、なかなか人材の定着がしないという事情を抱えています。これに対応して心掛けることとしまして、賃金を上げる事を始め、働きやすい労働環境を整備することが大切です。

ただし、介護の仕事はもともと一人のスタッフがケアできる人数に限界があり、高収益が期待できるというものではないので、賃上げといっても自ずと限界があります。従いまして、賃金以外の待遇の改善により人材を確保することも重要です。

これに関してすぐ思いつくのは労働時間短縮等ですが、介護の仕事は原則として24時間対応が必要ですから、深夜労働はもちろんありますし、人手不足の場合は、基本的には既存の職員の残業で対応するのが普通ですから、こられによる改善も限界があります。従いまして、例えば、職員間のコミュニケーションがよいとか、職場の雰囲気が明るいなどの、賃金や労働時間以外の労働条件の改善により、働きやすい職場を作り、それをアピールしていくことで、人手不足を解消していくことが重要になってきます。

もちろん、賃金や労働時間に関して、会社の経営に支障がない範囲で、できる限り好条件を提示していくことも必要なことは、言うまでもありません。

24時間365日体制の労働時間管理

3つ目の特徴として、24時間365日の労働時間管理があげられます。介護事業所は、事務管理部門は、標準的な1日8時間、1週間40時間の労働時間制で特に問題はありませんが、介護現場部門は、入所している要介護老人をかかえておりますから、24時間勤務かつ年中無休です。従いまして、通常の労働時間制では、残業代が非常に高額になるという傾向があります。

これに対応して心掛けることとしまして、労働基準法で認められている変形労働時間制を上手に活用することがあげられます。変形労働時間制とは、1週間や1ヶ月、1年間等の一定の期間において、平均して週40時間を超えない範囲内において、特定の日又は週において、1日8時間1週40時間の法定労働時間を超えても、違法とはしないという制度であります。

ですから、この制度のもとで法定労働時間を超えて労働させた場合には、残業代を支払う必要はありません。例えば、1カ月単位の変形労働時間制を採用すれば、夜間勤務について、午後4時から翌午前10時までの16時間勤務(休憩時間2時間含む)という2勤務分を連続させた勤務シフトを組むことが可能になります。しかも、通常であれば、この時間について、深夜割増賃金にくわえ、8時間分の残業手当を支払わねばなりませんが、変形労働時間制を利用した場合には、この分の残業に関しては違法性が阻却されますから、残業手当を支払う必要はありません。

このような制度を上手に活用することで、労務費の高騰を防ぐ事が出来ます。

出産育児など、女性社員への配慮

4つ目の特徴として、女性社員が多い事であります。介護という業務の性質上、女性職員の方が上手に仕事をこなせるという側面があるのですが、そのため、介護の職場では女性の占める割合が高くなる傾向があります。このことに対応して心掛けることとしまして、母性保護、出産育児への配慮が必要になります。

労働基準法においては、労働者の申し出があった場合には産前6週間及び産後8週間の産前産後休暇が規定されております。また、育児介護休業法においては、労働者の申し出があった場合には、子が1歳に達するまで(一定の場合には1歳6カ月まで)育児休暇の取得が可能です。

また、子が3歳に達するまでは、事業主は育児をする労働者に対して勤務時間の短縮などの措置を講ずることが義務付けられております。また、労働者がこられの制度を利用した、または、利用の申し出をしたことをもって、解雇や退職の強要、減給、降格などの不利益な処分をしてはならないと規定しております。

このような女性保護のための各種法律に留意しつつ、女性職員に対する十分な配慮が必要となってまいります。

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