新入社員が入ったら必要な手続きとは? - 所得税、住民税編
新入社員が入ったら、所得税や住民税について事業主はどのようなことをすればよいのでしょうか。それぞれ準備から初回の給与明細作成までの流れに沿って説明します。
1、所得税についてするべき手続きはこれ
新入社員が御社の給与から支払うべき所得税は、個人個人で支払うのではなく、給与支給時に予め控除して預かっておき、事業主が従業員にかわって納税する、ということに法律上決められています。ですから、所得税に関する手続きは新入社員の給与支給時から始まるわけですが、その時になっては間に合いません。
(1)扶養控除等(異動)申告書を提出してもらいましょう
新入社員が入社したら、事業主は年金手帳や雇用保険被保険者証など必要書類のほか、身元保証書など個々の事業主が決めている必要書類を提出してもらいます。そのときに、「扶養控除等(異動)申告書」の提出も求めます。この扶養控除等(異動)申告書を使用して、給与計算時に控除すべき所得税の額を算出するからです。
扶養控除等(異動)申告書とは、その新入社員に扶養する(養っている)親族がいることの申告書です。独身貴族と違って養うべき家族がいる人の所得税は少なくして家計の負担を減らすため、被扶養者について把握しておくのです。養うべき人のいない新入社員の場合には、この申告書の提出は不要です。
(2)所得税の源泉徴収額を算定しましょう
源泉徴収税額表を見て、源泉徴収税額を決定し、給与明細作成時にその金額を該当欄に記入し、給与支給額の算定をします。
本来所得税は1年間分の所得を税務署に申告し、それに対して所得税が課税されてから、1年分の所得税を支払う、というものです。給与所得など源泉徴収されない所得については、その原則通り確定申告などを基に、1年分を一括で手続き・納税しますね。
しかし、給与所得については、毎月の給与からおおよその年収がわかりますから、一括で大金を納める負担をなくすため、毎月の給与から年間税額の12分の1を納めておくのです。所得の発生する源泉(給与支給の場面のことを指す)から予め徴収しておくために源泉徴収といいます。
新入社員の基本給与額は雇用契約で決定しているはずです。これに加算される手当を合わせた額と、不要控除(異動)申告書で判明した被扶養者の数を、源泉徴収税額表にあてはめれば、2つの欄のまじわるところが、その従業員の給与から控除すべき源泉徴収税額が決定します。被扶養者のいない場合はその欄を使えば同様に源泉徴収税額が決定します。
2、住民税についてするべき手続きはこれ
所得税がいま現在支給される給与について課税される税金であるのに対し、住民税は前年の所得に対して課税される税金です。というわけで、新入社員が入ったらまず、前年の所得があるかどうかの確認が必要です。
(1)住民税の特別徴収の手続きをします
個人個人で住民税を支払う「普通徴収」に対して、会社が従業員にかわって住民税を納税する「特別徴収」は、従業員の前年所得に対して翌年の6月から翌々年の5月までの12か月にわたって給与から控除し、分割納税します。これは、会社が毎年従業員の1月1日現在の住所地市区町村に「給与支払い報告書」を提出し、それをもとに市区町村は住民税を計算して5~6月頃に「この従業員の給与から控除して納税する住民税は○○円です」と通知をよこすため、6月分給与から納税をはじめるからです。
これが住民税の「特別徴収手続き」ですが、新入社員の場合にはいつ、どうしたらよいでしょうか。
これも、入社時から準備をしておくことで初回の住民税控除までスムーズに進めることができます。
(2)新卒新入社員の住民税手続きはいりません
前職のない人・新卒の新入社員は前年の所得がないため、当年に支払うべき住民税はゼロ円です。ですから住民税に関しては何の手続きもいりません。翌年も在籍していたら今年の所得をもとに上記の特別徴収の手続きをして6月分給与から住民税を給与から控除して納税します。
ただし、新卒者といっても学校に行きながらすでに所得があった人は、次項の前職のある新入社員と同様の手続きをします。
(3)転職新入社員の住民税手続きは?
新入社員の入社手続きにおいて、各種の必要書類の提出を求めると思います。その際、転職者であった場合に、前の会社から御社まで引き続き住民税を給与天引きで納税するという「特別徴収」を新入社員が選択していたら、前の会社から御社宛てに「住民税異動届」の送付をしてもらうことが、最初にするべきことです。この異動届の上部には前の会社が必要事項を記入してくれています。御社では用紙下部の「転勤等による特別徴収届出書」欄の必要箇所に記入をして、当該新入社員の住所のある市区町村に提出し、新入社員の初回給与から特別徴収をして納税します。
上記と違って前の会社で住民税が一括徴収されていたり、新入社員が普通徴収を選択していた場合には、御社がこの新入社員の住民税を徴収する必要はありません。すでに前の会社によって支払われているか、従業員が個人で支払っているからです。この場合も新卒者採用時と同様に、翌年の5月まで手続きは不要です。前職があっても、一括徴収も普通徴収の選択もされていない場合には、御社が特別徴収の手続きをすることになります。
手続きに迷ったら、各市区町村の住民税課に問い合わせると詳細を教えてくれます。