給与計算ラボ

業種別の給与計算の注意点

ガソリンスタンドの給与計算 - 労務関係の整備と労働保険、社会保険の加入義務

ガソリンスタンドの給与計算の特徴と心掛けたいこととしては、まず、パートやアルバイトや多く、それに伴う労務管理の問題があること、ある種の資格手当が必要になること、個人経営のガソリンスタンドの場合、労働時間の管理や賃金の支払が適切でないところが散見すること、などがあげられます。

まず、パート・アルバイトが多いということにつきましては、個人経営のガソリンスタンドの場合、店長が個人事業主で、あとは、全員がパート・アルバイトというところが大半です。法人の場合も、ごく少数の正社員以外は、やはり、アルバイトとパートが多くなります。

これらのパートやアルバイトは、有期雇用契約が多くなります。有期雇用契約の場合には、退職時にトラブルになる事が多くなりますから、採用時に、雇用期間、契約の更新の有無、更新の際の判断の基準を、書面にて労働者に明示する必要があります。

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労働保険や社会保険の扱い

また、労働保険や社会保険についてですが、まず、労災保険に関しては、雇用期間・勤務時間・勤務日数にかかわらず、労働の対価として賃金を支払い、事業主との間に使用従属関係が認められれば、使用者に加入義務が発生します。ガソリンスタンドで、普通にパートやアルバイトを雇えば、ほとんど加入義務が発生します。

雇用保険に関しては、週の所定労働時間が20時間以上、雇用期間が31日以上となる見込みがあれば、対象になります。アルバイトでも、所定労働時間や雇用期間が少しでも長くなれば、この雇用保険に加入させなくてはなりません。健康保険や厚生年金保険などの社会保険に関しては、法人の場合には1人でも労働者を使用すれば、個人経営の場合には常時5人以上の労働者を使用すれば、社会保険の強制適用事業所に該当します。

したがって、例えば、正社員に比べて所定労働時間及び月の所定労働日数が4分の3以上ある者等一定の要件を満たしたものを雇い入れる場合には、健康保険・厚生年金保険などの社会保険に労働者を加入させる義務が生じます。

これらの公的保険に加入させることは、労働者が安心して働くためには非常に大切なことなので、保険料の支払いが大変であることは分かりますが、加入義務が生じた場合には、きちんと対応しなければなりません。

また、どうしても、社会保険料の負担が耐えられないという場合には、未加入にするのではなく、労働者の勤務時間や所定労働日を変更して、社会保険の適用除外労働者に該当するように、採用条件の変更などの工夫をすべきです。

危険物取扱者資格の待遇と手当

次に、ガソリンなどの危険物の取り扱いに関する資格には、危険物取扱者があり、これは、丙種、乙種(第1類から第6類)、甲種の3種類があります。ガソリンスタンドには、最低限乙種4類の資格保有者が1人は必要です。普通は、店長がこの危険物取扱乙種第4類の資格を保有しており、その場合には、他の者が無資格者でも、その資格保有者がそばにいれば、無資格者でもガソリンを取り扱えますから、特に問題はありません。

しかし、即戦力の労働者を採用するために、または、労働者の技能向上のために、この資格の保有者の採用又は資格取得を奨励する場合があります。この場合には、資格手当などを上手に設定して、そのことを促進する必要があります。また、最近のガソリンスタンドでは、サービス向上のため、自動車の整備も合わせて行っている所もあります。そういったところでは、自動車整備士の保有者が従業員の中にいると大変重宝します。そのような場合でも、適切な金額の資格手当を支払って、その従業員にそれなりの待遇を与える事が必要です。

労務関係の整備と残業代の支払い

最後に、個人経営のガソリンスタンドの場合、例えば、タイムカードを設置していなかったり、給与明細を出さずに、事業主が直接現金を手渡しすることで給与をしはらったりするところがあると聞きます。

タイムカードを設置していない、給与明細を渡さない、等という場合に一番問題になるのは、残業代の未払いです。タイムカードを設置していないと、特に終業時間がはっきりしませんから、残業があった場合に、それに対して正確に残業手当を支払う事は到底できません。また、給与明細にその月の残業時間と時間単価、残業手当の金額が基本給とは分けられて支払われてこそ、残業代がきちんと支払われていることが証明ので、その証明がないと、残業代の未払いが非常に疑われます。

個人経営の小規模な事業所の場合、家族経営時代の大雑把な経営管理の延長で、このような労務関係の整備が遅れている所もあります。このように未払いの残業代が常に発生するような状態であれば、万一、事業主と喧嘩して退職した労働者がいた場合、その労働者が未払い残業代のことを理解していて、かつ、現実にその労働者に未払い残業代が発生していれば、確実に労働基準監督署に駆け込みますから、十分な注意が必要です。

やはり、家族以外の他人を採用する場合には、タイムカードの設置や給与明細書の交付と言った労務の基本的事項は、トラブルの防止や、労働者の権利保護、事業主の社会的責任という観点から、しっかり守られるべきです。

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