給与計算ラボ

業種別の給与計算の注意点

工務店や内装業の給与計算 - 複雑になりがちな業務のアウトソースのすすめ

工務店・内装業の給与計算の特徴としては、給与計算や労務管理のアウトソーシングがおすすめなこと、社会保険の未加入問題が起こりやすいこと、事故が起こりやすいので安全衛生に気をつけなければならないこと、などが挙げられます。

まず、大工さんや職人さんは、建築や内装工事に関してはプロフェッショナルでも、給与計算や労務管理といった事務系の仕事はあまり得意ではないという方が大勢いらっしゃいます。ですから、従業員を採用したものの、業界では最初の3ヵ月は試用期間であることが常識だから、雇用契約書にその旨を記載しなくても、最初の3ヵ月は当然に試用期間であると主張してみたり、また、採用時に雇用期間を6ヵ月と定めて契約したのに、最初の3ヵ月で解雇した場合、解雇手当又は解雇の日から30日前の解雇予告が必要になるのですが、それらをせずに即時解雇したりします。

これらは、労働基準法などに違反しますが、事業主の方が平気でそんなことを行ったりする場合があります。

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給与計算業務のアウトソース

また、工務店の場合には、建築工事の期間のみ職人さんを雇用したり、また、下請けや孫請けに伴って、自社の従業員を派遣社員として他の会社に派遣する場合もよくあります。また、正社員、期間雇用社員、派遣社員、請負業者などが混在して一つの工事に従事することも良くあります。

そのような複雑な状況下では、給与計算や労務管理を法令通りに適切に行う事は難しく、専門の担当職員を置く場合は別として、事業主が通常の業務をしながら同時にそれらの業務をすることはほぼ不可能です。このようなことから、こういった業務について専門の担当職員を置く事が出来ない場合には、事業主が本業に集中するためにも、給与計算や労務管理を専門に行う外部の受託会社にアウトソーシングすることが一番良いかもしれません。

なお、工務店や内装業に関しましては、偽装請負が問題となる事があります。偽装請負とは、大きな工事では、元請の会社が、その請け負った仕事の一部を他の会社(下請会社)に請け負わせることが良くあります。この場合、下請け会社が、その工事現場に自社の従業員を送って業務に就かせることがよくおこなわれます。

しかし、この場合、その従業員に対して工事現場の元請会社の社員が指示を出すことは違法です。元請会社が従業員に指示を出せば、それは請負ではなく、派遣となります。労働者派遣の場合には、人材派遣業の許可が必要です。この許可を受けさせないで、請負という業務形態をとりつつ、他の会社が管理する工事現場に自社の従業員を送り込んで、その他の会社の指揮のもとに労働をさせると、この偽装請負となります。

建設業務においては、労働者派遣自体が禁止されていますから、請負の場合、自社の労働者に対し、現場の元請会社の社員が指示を受けさせることは出来ません。すべて、作業指示から安全管理まですべて自社の管理者が行わなくてはなりません。偽装請負の問題は、この業界で多発していますから、特に注意が必要です。

労働保険の加入のすすめ

次に、社会保険の未加入問題があります。工務店・内装業では、ある一つの工事の工期のみ従業員を雇うとか、冬季のみ、又は夏季のみで従業員を雇う事が良くあります。こういった雇用は通年の雇用でありませんから、こういう有期雇用の従業員に対して健康保険や厚生年金保険の社会保険に加入させないことがよくあります。

しかし、法人又は常時5人以上の労働者を使用する建設業の事業所は健康保険・厚生年金保険の強制適用事業です。この事業所に勤務する方の中で、一定の短期雇用の従業員やパートさんは、適用除外とされることがあります。しかし、日々雇い入れられるもので1月を超えて引き続き使用されるに至った者、2月以内の期間を定めて使用される者がその期間を超えて引き続き雇用されるにいたった場合、季節的業務使用されるものが4カ月を超えて使用されるべき場合、臨時的事業に使用されるものが6ヵ月を超えて使用されるべき場合、には、短期雇用者といえども、健康保険や厚生年金保険に加入させる義務が発生します。

また、パートさんについても、厚生年金保険に関しては、1日の所定労働時間が通常の労働者のそれの4分の3以上で、かつ、1月の所定労働日数が通常の労働者の所定労働日数の4分の3以上である場合には、その保険に加入させる義務が生じます。短時間労働者だから、短期雇用者だから、社会保険に加入させなくてもいいだろうというのは、間違った考えなので、加入要件に該当するかどうか調べたうえで、該当する場合には、それらに加入させなくてはなりません。

労働安全についての適切な対策

最後に、工務店・内装業などにおいては、もともと危険を伴う業務であるうえ、元請会社、下請会社、孫請会社など複数の会社の従業員が同じ現場に混在して作業を行うため、労働安全に関して責任の所在がはっきりせずに、労働安全に関する適切な対策が取りにくい場合が多々あります。

しかし、この業界では重大事故が良く起こります難しい問題もあるかとは思いますが、労働基準法や労働安全衛生法の規定を遵守し、安全対策に万全を期す必要があります。また、万が一、労働災害が発生した場合には、労災隠しなどはせず、きちんと申告して、労働者に対してしっかりとした補償を提供すべきです。

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