給与計算ラボ

給与の年末調整と確定申告

年末調整でつまづかないための上手な給与計算

所得税額の誤差を調整するのが年末調整

毎年やってくる年末調整。この手続きは非常にややこしく面倒に思えがちですが、実は、要点さえしっかり理解してしまえば、そう難しいものではありません。

まずはじめに、年末調整が何のためにあるものであるかをもう一度確認しておきましょう。

年末調整は、年度末に所得税額の誤差を修正するための手続きです。それでは、どうして誤差が生じるのかというと、給与所得に対しては源泉徴収制度が存在するためです。

所得税は、年間所得額に応じて5%〜40%の範囲で税率が決められます。ということは年間の所得が確定しなければ税額の算出もできませんので、本来であれば正確な税額は年度末になるまで決定しません。

しかし、給与所得者の場合は毎月の給与があらかじめ決めらていますから、前もって概算することが可能です。そこで、その概算額に基づいた税額を給与から天引きするのが、源泉徴収制度です。

源泉徴収制度があるおかげで、納税者からすれば手間が省け、申告ミスもなく、給与所得控除も大きいという恩恵を受けることができています。また、まとまった金額を一度に納付するより楽だということもあるでしょう。

国からしても、税金の取りっぱぐれがなくなりますから、非常に優秀な制度だといえます。

しかしながら、概算はあくまでも概算です。概算が何度も繰り返されると、どうしても本来払うべき金額との誤差が目立ってきてしまいます。また、概算段階では扶養家族の人数など考慮されていない控除もあります。

こうした誤差を年末(ただし死亡による退職や長期の海外赴任に就く場合は、年度途中であっても年末調整が必要です)に計算し、差額を埋めるのが年末調整の目的です。

この基本概念が念頭にあれば、年末調整の際にいたずらに混乱する心配はありません。

概念を理解すれば計算も単純

年末調整の理屈がわかっていれば、最終的な調整額の算出そのものは、非常に簡単な計算でできてしまいます。

(1)1年間の源泉徴収税額の合計を出す …A

その年にもらった給与明細書から、該当欄を抜き出して足し算するだけです。これが、すでに支払っている税額の合計です。

(2)本来支払うべき所得税額を計算する …B

各種書類を揃えて控除額を算出し、それを総収入から引くことで課税対象となる所得額を出します。そこに税率を掛ければ本当の所得税額が導き出されます。年末調整で一番煩雑なのが、ここの部分です。

(3)AからBを引き算する

支払い済みの税額から支払うべき税額を引き算すれば、差額が出ます。

この計算結果がプラスである場合は、その金額だけ余分に払っているということになるので還付されます。反対にマイナスであれば、納税額が不足しているということですから、その分を追加で納税する必要があります。

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年末調整の具体的な流れと手続き

年末調整における手続きの煩雑さは、ほぼすべてが、本来支払うべき税額を算出する段階だといえます。

ここでは、その具体的な手続きを見ていきましょう。

所得税額の計算

まずは、正確な所得税額を算出しなければはじまりません。

所得税額は、次の3つのステップで計算できます。

  • 「給与収入」−「給与所得控除」=「給与所得」
  • 「給与所得」−「各種所得控除」=「課税所得」
  • 「課税所得」×「税率」=「所得税」

気をつけたいのは、すべての所得に対して税金がかかるわけではない点です。社会保険料や非課税交通費は控除されますし、ほかにも配偶者控除や扶養控除などが考えられます。

配偶者特別控除申告書の提出

本人の所得が1000万円未満かつ、配偶者の所得が76万円未満である場合は、この控除が適用されます。

適用対象であれば、申告書の提出を忘れないようにしましょう。

給与所得者の扶養控除等申告書

本来は年のはじめに提出しておくべき書類ですから、年末の時点で心配をする必要はありません。しかしながら、扶養家族の増減(誕生、死亡)は時期を選んではくれません。年の途中にも頻繁に起きます。年頭時点から状況に変化があった場合には、年末に再度確認して提出する必要があります。

そのほか、年末調整の際に添付すべき書類には、以下のようなものが挙げられます。

  • 国民年金および国民年金基金保険料支払額証明書
  • 生命保険料支払額証明書
  • 個人年金保険料支払額証明書
  • 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
  • 小規模企業共済等掛金(中小企業基盤整備機構と契約した共済契約・心身障害者扶養共済制度などの掛金)支払額証明書
  • 損害保険料支払額証明書

これらはすべての人にとって必要だという書類ではありません。自分が該当するものだけを提出すればよいわけですが、それだけにかえって必要書類を漏らしてしまうということも起きがちです。

また、年の途中で採用された従業員の場合は、以前の職場における源泉徴収票の提出も忘れてはいけません。

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