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労働保険関係の年度更新の手順と注意点

この頁においては、労災保険と雇用保険のふたつの総称として労働保険と表します。

労働保険については、毎年定例の年度更新という事務が必要です。なすべきことを順を追って説明しますので、準備から納付までスムーズにそして注意しながら進めましょう。毎年5・6月頃、御社にも他社同様に、都道府県労働局から労働保険料申告書が届くはずです。これが年度更新スタートの合図です。

労働保険のふたつはそれぞれ別の制度ですが、保険料申告と納付をまとめてすることができます。

1、労災保険のみ全額会社が負担します。

労働保険のうち、労災保険はすべての従業員が万一仕事に関して災害にあったときに、会社が従業員に負担すべき補償について会社が加入しておく保険です。従業員が仕事中にケガをして入院をし、障害が残るようなことにでもなれば会社が当該従業員に負担する補償は医療費から心身に対する賠償など、その金額は莫大なものになる可能性があります。

そのために会社の経営が悪化することのないよう、会社は労災保険に加入し、万一の場合はその保険金から従業員に補償をすることにしているのです。ですから労災保険の保険料は全額会社が負担します。

従業員の給与から控除したりはできません。従業員は無関係、会社が加入しているに過ぎないからです。自動車保険の対人保険と同様に考えるとわかりやすいでしょう。

一方、雇用保険は従業員が離職した後、新しい職が見つからず生活が困ることのないように、そういう場合に保険金の給付をしてもらうよう加入しておく保険です。これは従業員が自分の将来のために加入するものですから従業員が全額負担してもよさそうですが、会社が一定割合を負担するきまりです。これにつき、従業員が負担する分については給与から控除して会社が一括して納付します。

注意点は、労災保険は全従業員分につき加入しますが、雇用保険はその対象とならない従業員がいる点です。たとえば短時間かつ季節的雇用者や、65歳以上で新たに雇用された人、会社役員などです。

2、毎年6月1日から7月10日に必ずします。

労働保険は業種によって一元適用事業と二元的用事業に分類されますし、その仕事内容によって継続事業と有期事業に分かれます。御社がどの事業に分類されるのか把握してください。その分類によって手続きが異なるのですが、多くの場合は一元適用の継続事業に該当しているはずです。

保険年度は4月1日から3月31日です。その間に支払われた給与総額に事業種類に応じた保険料率をかけて保険料を算出します。その保険料は、その年度㋑支払うと思われる給与の見込み額をもとに概算保険料を割だし、申告・納付します。3月末に年度が終わったら見込みと現実の給与総額の差から生じる保険料の過不足を清算するしくみです。こういう過旧年度の過不足清算と新年度の見込み額申告が毎年6月1日から7月10日までの間に必ず要する年度更新です。

3、手続きには準備が肝心です。

まず、事前に昨年作った「労働保険 確定保険料算定基礎賃金集計表」を見ておきます。新たに入社・退社した従業員がいないか、給与支払い実績はどうか、などを確認します。

5月下旬になったら「労働保険概算・確定保険料申告書/(石綿健康被害救済法)一般拠出金 申告書」が都道府県の労働局から送付されてきます。その記載内容に誤りがないかチェックをしましょう。
前年度に提出した申告書写しと照合しつつ、御社の名称・住所、適用事業分類、保険料率、申告保険概算保険料の金額などを慎重にチェックします。

4、確定保険料算定賃金集計表を作りましょう。

新年度の「労働保険概算・確定保険料申告書/(石綿健康被害救済法)一般拠出金 申告書」に記入する前に、「確定保険料算定賃金集計表」を作成して、申告書記載のための前年度支払い給与総額の把握をします。これはあくまで申告書記入の準備のために作成するもので、どこかに提出するものではありませんから、きまった形式もなく、御社が分かりやすいようにエクセルやオンラインソフトなどを利用して自由に作成してかまいません。

注意点としては、3年間は遡って調べることのできるよう、きちんと保存しておくことです。

集計表で対象となる従業員と、給与の額のうち対象額がどの範囲なのかを確定します。注意すべきは、社会保険料や税を控除するまえの給与が労働保険の対象だという原則です。

5、確定保険料申告書を記入して納付しましょう。

集計表で下準備を終えたら、いよいよ新年度の「労働保険概算・確定保険料申告書/(石綿健康被害救済法)一般拠出金 申告書」に記入します。

まず、前年度の対象従業員数を記入します。次に前年度の確定保険料を計算して出します。最後に新年度の概算保険料を記入します。

この申告書の下部に「領収済通知書」がついています。その納付額の欄に記入したら7月10までに金融機関で納付します。
この額が40万円以上ならば3回の分割納付ができます。

この場合も納付期限がそれぞれありますので注意しましょう。初期は7月10日、第2期は10月31日、第3期は1月31日が期限です。ただし期限日が金融機関の休業日であれば翌日に納付することができます。

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