給与計算ラボ

中小企業の給与

準備はお済みですか?いよいよ始まるマイナンバー

いよいよ、マイナンバー制度のスタートラインが見えてきました。

これは2016年1月より導入が決まっているもので、すべての人に番号をつけそれに基づいて社会保障や個人情報の管理などの行政処理をすべて行う、というものです。

いわゆる特定個人情報といわれる大切な個人情報ですので、いくら国や地方公共団体だからといって目的を問わず自由に使用できるわけではありません。

現状において利用範囲は、「社会保障」「税」「災害対策」の3つで、法律により定められた手続きでしか利用することができません。具体的には、健康保険や厚生年金の手続き、確定申告や年末調整、住民税の申告納付手続きなどがいわれています。

半数以上の中小企業がまだ準備出来ていない

10月にはいって公表されたある調査では、中小企業のマイナンバー対応状況について、「おおむね完了」6.6%、「作業中」15.5%、「計画中」20.4%と、対応準備を進めている中小企業がまだ50%に達していないことが報道されています。また、この調査の中で準備が進んでいない中小企業は、「対応すべきことはわかっているが着手できていない」26.6%、「対応の必要があるかどうか分からない」24.0%、「対応することを考えていない」6.9%となっています。まだこの状況にある中小企業では、1人でも従業員を雇用していれば源泉所得税や社会保険に関連した業務のために、従業員および扶養親族のマイナンバーを収集し取り扱うことになることを、まず最初に政府公報オンラインサイトなどで確認をしてください。

給与計算にも影響を与えるマイナンバーですが、企業は2016年1月までにシステムを整備して、社員に給与を支払ったり、社会保険の手続きをしたりする際や、また顧客と取引を行う際には、その書類に記載する必要があります。

給与所得の源泉徴収票であれば、平成28年1月の給与支払いから適用され、中途退職者を除き、平成29年1月末までに提出する源泉徴収票からマイナンバーを記載する必要があり、その他健康保険、厚生年金の加入手続きでも必要になってきます。端的にいうと、マイナンバーを知らなければ、これからは給料を支払ってもらえなくなる、ということです。

個人の所得が発生するところ全てにマイナンバーが関係しているので、企業が社員に給料の支払いをするときには、社員のマイナンバーを集めて、「給与支払報告書」に記載のうえ、社員の住む地方公共団体に提出しなければなりません。しかも、収集したマイナンバーが漏れないよう厳重に管理しないと、法律で罰せられることになります。

したがって企業側としては、中小零細企業であっても、人事・給与、会計システムにおいて業務プロセスや情報システムの改修が必要になります。

会社が給与計算をする場合、その延長線上には年末調整事務や法定調書作成事務等があります。法定調書の対象となる金銭等の支払等を受ける人については、その人のマイナンバーの記載も必要となります。

パッケージソフトを利用している企業であれば、ソフトを提供している企業の方でマイナンバー制度適用へのバージョンアップを対応すると思われますが、一部でもマイナンバーを使用するソフトを自社開発している企業は、早急な改修作業が必要です。

たいていの市販パッケージソフトは、保守契約内でマイナンバーに対応した最新版にバージョンアップ可能なケースが多いですが、サポートが終了している古いパッケージを継続利用している場合は、製品を買い直す必要があります。自社で利用しているものがどのような状態のものなのか、あらかじめ確認をしておく必要があります。

またシステム対応への支出は、税務上どのように取扱うのかが非常に関心の高いところです。その支出は費用(修繕費)でいいのか、それとも固定資産に計上しなければならないのか、という検討が必要になっていきます。

税務上、システムプログラムの修正費用は,その修正がソフトウェアの機能上の障害の除去や現状の効用の維持等に該当するときは「修繕費」,新たな機能の追加・機能の向上等に該当するときは、新たなソフトウェアの取得と認められ「資本的支出」に該当します。

通常、法律等改正によるプログラムの修正は,ソフトウェアの効用を維持するために行われるものと考慮され、修繕費でよいとされます。

たとえば、消費税率の引き上げに対応する税率対応や、減価償却の償却率改正による更新は、修繕費とされていました。
今回のマイナンバー対応を考えると、具体的には、給与計算ソフトの年末調整の項目にマイナンバーの個人番号が付けるためのプログラム更新の支出などが想定されるので、これは修繕費に該当することになりそうです。

また一方で、今回のマイナンバー対応は、会社全体に関わってくるのでマイナンバーを保管するためやマイナンバーの漏えいを防止するため、サーバーを新たに購入するなども想定されます。

このような場合、新たなサーバーの取得は器具備品の取得になり、セキュリティを強化するため情報の暗号化ソフトを入れた際などは、新たなソフトウェアの取得と考えられ固定資産への計上が必要になってきます。

マイナンバー対応の支出については、連携するシステム会社から詳細な作業内容を記載された請求書などを受け取り、熟考の上税務処理を行うことをお勧めします。「マイナンバー対応システム一式」とだけ書かれた請求書になってしまうと、全額が固定資産に計上にすべきことにもなるかもしれないので注意してください。

マイナンバー制度は「先進国」のほとんどが導入している制度です。まだ対応準備を進めている企業が50%にも満たない現状の中でもスタートは待ってくれません。しかしせっかくのマイナンバー制度ですから、これを契機に経理担当者の方にお勧めしたいことがあります。

特定個人情報の取扱いガイドラインの中小規模事業者の特例的対応の中に「事務取扱担当者が変更となった場合、確実な引き継ぎを行い、責任ある立場の者が確認する」とありますので、業務の標準化を行い、そのプロセスを明確にすることが重要になるのですが、これは安全管理の面でも大変有効になります。

つまり、業務フローを作成し、個人情報の漏えい・滅失・既存・詐取につながらないよう、また、効率的な取扱い手順になるように人事・総務担当者が中心となって検討をして頂きたいということです。といっても、人材の不足などの理由で、システム選択から導入まで自社で行うことが困難なことも想定されます。そのような場合は、クラウドでマイナンバー管理が行える税理士に取り扱いを外注化することも選択肢の1つとして考えてみることをお勧めします。

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