給与計算ラボ

給与計算、社会保険と税金の知識

退職時期、入社時期と賞与計算の方法を解説します

退職時期や入社時期により賞与計算の方法に、なにも決まりはありません。

御社がどのように賞与を規定するのかによって、自由に運用・計算できるのが賞与です。そればかりか賞与を出さない、という選択ももちろん可能です。このように、賞与を支払うことは会社の義務ではありませんが、賞与の支払い規定を設けている会社の多くは、夏冬年2回の支給がほとんどです。

その時期は夏なら6月初旬から7月、冬は12月初旬から中旬までが多いようです。その理由は日本の昔からの暮らし方に根差しているからでしょう。スーパーやデパートのない時代、それぞれの家庭には表玄関ではなく台所に近いお勝手口がありました。

お勝手口にやってくるのは出入りの商店の人たちです。彼ら(彼女ら)はお勝手口から訪ねてきて、醤油やお酒、生活用品などの注文を聞いては届けてくれていました。

そしてそれらの代金は配達のたびに支払うのではなく月ごとなどにまとめて支払います。ときにはお財布の事情で支払いが遅れてもご近所同士のよしみで待ってくれることもあったでしょう。

しかし、お盆やお正月で誰もがお金を必要とする前には、それまでの半年間の支払いをきちんと済ませる、というのが習慣です。各家庭がお金を払ってくれなければ商店でも仕入れ代金をお盆正月前に仕入先に払うことができず、社会全体にお金がまわりません。お金がないと盆がこない、とか正月が越せない、というのはそういうことからです。

人々が会社で働く時代になってからもそういう考えは残り、また実際に支払いのためだけでなく夏季休暇や冬季休暇にお金は必要です。そんなことからボーナスを夏と冬に出す会社がまだ殆どなのです。

このボーナスは、従業員のどの時期の働きに対して計算し支給するのか、時期についても計算式についても各会社が決めることです。多くの会社では半年分の働きについて翌月評価・査定をしてボーナスを出したり、査定の翌月に出したりするのが一般的です。

たとえば、前年12月から翌年5月までの働きを査定して6月か7月にボーナスを出すような場合です。会社によっては昨年6月から12月までの働きを査定して、翌年6月に出すような会社もあります。ですから、会社ごとに定めるボーナスの評価対象期間のどの時期に入社・退社するかによって従業員のボーナスは変わってきます。

7月支給の会社でも、その評価や査定の対象は従業員の10月~3月の働きについてなのか、11月~4月なのか、12月~5月なのか、また支給月を7月にするのか6・8月にするのか、も御社が自由に決定できます。もちろん賞与を出さないことも、年に3回出すことも可能です。

御社が12月~5月の評価につき6月ボーナス支給、6月~11月の評価につき12月ボーナス支給と定めていたとします。

1、4月入社の新入社員を例に見てみましょう

4月に入社した社員にとっては2か月後にやってくる6月が最初のボーナス支給日となります。しかし、この社員は、評価対象の12~5月の6か月のうち4・5月の2か月しか働いていません。もし6月一〇日支給で6月1日入社の社員がいればその社員は一日も対象期間に働いていません。

2か月しか働かなくても6か月フルに働いた社員の3分の1を出すのか、フルで働かなかった従業員にはボーナスを一切出さないのか、もまた御社がどのように規定しているかによります。こういう場合、多くの会社では「寸志」を出すことが多いようです。4月入社で6月ボーナスだが評価対象期間に1日も働いていない社員がいる、とうことは評価対象期間終了からボーナス支給日まで月日が開いていることも考えられます。

さて、また半年が過ぎて冬のボーナスがやってきました。4月入社の新入社員は冬のボーナスの評価対象である6~11月の半年をフルに働いており、初めての通常ボーナスということになります。このボーナスはいくらなのか、これも各会社が自由に規定します。いくら支給するかは、社員の業績、資格、会社への貢献度、就業態度などによって会社が査定し、査定ごとの率を定めておいて給与にその率をかけてボーナス額を計算することが多いでしょう。

詳細を決めておくほど、社員は仕事上の頑張りどころを理解することにもなります。この会社ではこういう場合に評価が高い、とわかることで会社の求める人物像を社員は理解できるからです。反対に、減点対象を理解することで会社の望まない仕事のしかたや就業態度を理解することができます。

反対に、評価の基準が従業員にとって明確でない会社もあります。従業員から見れば、もし評価が自己評価より低ければ、仕事の評価以外に上司や評価担当者との人間関係が査定に影響しているのではないか、などと評価について会社の思惑について頭を悩ますかもしれません。かといって思わぬ好評価に一念発起して会社に貢献しだす社員もいるかもしれません。

どちらが良いかは会社それぞれ、従業員にとっても好みが分かれるところです。ここで私見を挟めば、少人数でアットホーム、面倒見のよい経営者が社員にあたたかかく遇したい、という志向ならば「曖昧評価」を良い方に活用できるのではないでしょうか。反対に仕事は仕事、という高効率と機能を自分の会社に求めるならば、やってほしいことに高評価、やってほしくないことに減点を明確に定めて合目的的に評価基準を使えばよいと思います。

どの程度明確な評価基準を社員に提示するのかも、その評価基準とともに社員が御社にもつ信頼や印象に影響します。つまりどのような会社にしたいのか、が表れるといっても過言ではないでしょう。

2、退職者の賞与はどう計算するのか?

これについても、どのように規定するかは各社の自由です。明確な基準を決めてあれば、退職を表明した社員の評価も基準に沿って行います。一方、退職を表明したらボーナス査定を下げる、ということも少なくありません。

社員の方では御社の基準をみていつ退社表明をすればボーナスが多くもらえるか、考えているのが普通です。ちなみに評価期間をフルに働いてボーナス支給前に退職したとしても、退職後にボーナスを支給してあげる、という会社は私見では聞いたことがありません。

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