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業種別の給与計算の注意点

飲食店の賞与(ボーナス)の支給、その特徴をご紹介します

毎年、夏と冬の民間企業の賞与の支給時期になると、大手企業では、いくらの賞与が出たというニュースがネットやTVをにぎわせます。しかし、その時期に飲食業界でよく耳にするのが、賞与を出せなかったという話です。今回は、飲食店の賞与の支給とその特徴をご紹介します。

そもそも飲食店に賞与があるのか?

どれほど世の中が不況でも、国や地方自治体は、公務員に夏と冬の賞与を支給しますし、民間企業でも不況の中でも成長を遂げ、堂々と従業員に賞与を支給する企業もあります。

では、飲食店の場合はどうなのでしょうか。

東京都の飲食店の賞与支給率は48パーセントにのぼる

ある調査では、Webによる求人(東京都)の際に、正社員に賞与を支給すると明記している飲食店は、飲食店全体の求人の48パーセントになっています。半数近い飲食店が正社員に対して、何らかのかたちで賞与を支給しているのは、意外と多い数字ではないでしょうか。

また、この調査結果の中から、個人経営店をチョイスすると、57パーセントの個人経営店が、正社員に賞与の支給を明記しています。個人経営店は大手企業に比べ、賞与を支給しない飲食店が多いという印象がありますが、昨今の飲食店業界の人手不足の風を受けて、個人経営店も大手企業に労働力を奪われないよう、従業員の待遇改善に努めていることがうかがえます。

求人の際に賞与の明記がない飲食店はダメ

では、従業員募集要項に賞与の記載がない場合はどうなのでしょうか。

結論から述べると、従業員募集要項に賞与の記載がない飲食店では、ほとんどの場合、賞与を支給することはないでしょう。
従業員募集要項に賞与の記載がない飲食店の場合、面接などで賞与の支給を匂わせても、実際に賞与を支給するのは、ごく稀なのが事実です。

賞与を支給する飲食店の特徴

賞与を支給する飲食店の特徴は、経験者の応募が集まりにくい形態の業種ほど、従業員に賞与を支給する、給与を高目に設定するなどして、従業員の確保を図っていることです。

例えば、イタリアン、和食、フレンチなど、スキルと経験が必要な飲食店では、必要なスキルを持つ経験者の応募が少なく、売り手市場になっていることがうかがえます。

しかし、まだまだ半数以上の飲食店が、従業員に賞与を指揮できないでいるのが現実で、飲食業界の雇用事情は苦しいと言えるでしょう。

飲食店で賞与を支給しないパターンの特徴

半数以上の飲食店が、従業員に賞与を支給しないのは、どのようなパターンなのでしょうか。

ありがちなパターンを4つご紹介します。

従業員の賞与を設備投資に回す

飲食店は従業員の出入りが激しい業界です。すぐに辞めてしまう従業員に賞与を支給するよりも、かたちとして残る設備に資金を回そうと考える経営者もいます。

店舗の業績が好転した時期に、設備をどんどん新しくする飲食店は、従業員の賞与の資金を設備投資に回してしまっている可能性があります。

売り上げ好調店舗の利益を売り上げ不調店舗の補てんに回す

複数店舗を展開している飲食店では、売り上げが好調な店舗が稼ぎ出した利益を、業績不振に陥っている店舗での損失補てんに、回さなければならない場合がありがちです。

そのような場合、従業員に会社の事情を説明し、寸志としてでも賞与を支給すると、売り上げが好調な店舗の従業員のモチベーションを保つことができるのですが、なかなかそうはできないのが現状の飲食業界なのでしょう。

過去の業績不振の補てんに回す

新規オープンスタッフでもないかぎり、飲食店には従業員が知らない過去の歴史があります。その歴史には「業績が不振だった歴史」もあるでしょう。小規模の飲食店でありがちなのは、その業績不振だった時代に経営者の個人資産から、資金を流用し業績不振を乗り切った過去です。

業績が好転すると、つぎ込んだ個人資産を回収したくなるのが人間のサガです。売り上げが好調な時期に経営者が、「昔は業績が悪くてね」などと言い出したなら、過去の業績不振の補てんに、現在の好調な稼ぎを回そうとしているのかもしれません。

そもそも賞与という制度がない

そもそも賞与という制度がないことが、個人経営の飲食店にはありがちです。家族だけで切り盛りしていた飲食店で、何らかの理由で家族の1人が欠けてしまったために、新たに従業員を雇い入れた場合などに発生しやすい状況でしょう。
このような場合は、今後の賞与をどうしていくかを、経営者と従業員が腹を割って話し合う必要があります。話し合って決裂したなら、経営者は新たな従業員を探すことを、従業員は新たな就職先を探すことも視野に入れるべきかもしれません。

飲食店の賞与の支給の特徴のまとめ

意外なことに、飲食店での賞与の支給率は、48パーセントにもおよびます。現在の飲食業界は売り手市場であるため、賞与を支給できていない半数以上の飲食店は、あっさりと従業員に辞められてしまう可能性もあります。5千円の寸志でも構わないので、賞与の時期には、従業員のモチベーションをアップさせる何らかの手立てが必要かもしれません。

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