給与計算ラボ

労働保険を計算してみよう2 雇用保険の計算

労災保険と雇用保険のふたつの労働保険料は、原則ひとつにまとめて申告して納付します。申告は「確定保険料申告書」に記入してふたつの保険料を合算して申告します。ここでは雇用保険分について説明します。

(1)雇用保険の計算は毎年の「年度更新」で

雇用保険など労働保険の計算は、毎年度ごとに行う年度更新の際に必要です。労働保険についての年度は4月1日から始まり翌年の3月31日で終わります。ですから3月末に前年度が終了したらさっそく本年度の計算をします。

まず、雇用保険の加入対象者分について、前年4月1日から本年3月31日までに支払った給与総額をもとに確定保険料を算出してください。その間にしはらった保険料は見込額でしかありませんから、現実の給与額が確定したら、実際はいくらの保険料を払うべきだったのかその差額がでます。

多く払っていた分を還付してもらったり本年度分から差し引いてもらう場合と、足りずに本年度分に追加して払う場合があります。このように毎年度、年度替わりの時季に繰り返される労働保険の手続きを「年度更新」といいます。

(2)まず申告書がとどきます

5月下旬になると労働局から「労働保険概算・確定保険料申告書/(石綿健康被害救済法)一般拠出金申告書」が届きます。その申告書を見て、適用事業の分類が御社のものと合致しているか、申告書の種類を確認します。次に、御社の事業種類に合った保険料率になっているかチェックします。申告済概算保険料の金額とメリット制適用などについて確認し、もちろん書類下部の領収済通知書記載の御社の商号や住所に誤りがないかきちんと確認しておきましょう。

ちなみにメリット制とは、各事業における災害防止努力の結果によって、保険料率や保険料額を増減させる制度です。

(3)集計表をつくりましょう

「労働保険 確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」をつくりましょう。その数字をもとに申告・納付をしますからこれは雇用保険料計算の準備書類です。年度更新時に一年分を作るのではなく、表計算ソフトなどを利用して、毎月締めておけば年度末には合計額を出すだけで足り、スムーズに年度更新の手続きにはいることができます。フォーマットに決まりはありませんから、社内で使いやすいように作っておけばよいでしょう。

4月から毎月の被保険者数と給与総額を記載しておきます。労災保険計算にも給与総額は必要ですが同額になるとは限りませんから、別欄に作っておいて年度末にそれぞれ合計できるようにしておくと便利です。

集計表をもとに年度末の雇用保険加入者の給与総額を算出します。この給与総額が年度更新時に提出する確定保険料申告書の⑧に記入する数字になります。給与総額のうち、免除対象高年齢労働者分の給与総額がいくらになるかも、集計表で把握しておきます。この年度末の総額は確定保険料申告書の⑧(ニ)に記入すべき数字です。

(4)確定保険料申告書に記入して計算

いよいよ年度更新の準備段階を経た本番の手続きです。確定保険料申告書を記入して申告し、その申告額を納付すれば手続きは終了です。申告が済んだら7月10日までに納付してください。金融機関や郵便局からの納付が可能です。もし納付額が40万円以上の場合には3回に分けて納付することができ、これを延納といいます。

一括全納か延納かは申告書の⑰欄に記載することで選択が可能です。⑰延納の申請の納付回数欄に1か3を記入して申請します。

申告書の⑦の表のうち、雇用保険分箇所の(ハ)に集計表で算出した給与総額を記入します。その下段の(ニ)高年齢労働者分の給与総額をやはり集計表をもとに記入します。そして(ハ)から(ニ)を引いた金額が⑦最下段の(ホ)保険料算定対象者分に記入すべき数字となります。

その右の欄に御社の業種に合った保険料率を記入します。その料率を(ホ)保険料算定対象者分の金額にかけた数字が御社が今回申告・納付すべき雇用保険料となり、保険料率欄の右欄に記入することになります。これは、同じく⑦上部の労災保険分と合計して⑦上部右角に総額を記入します。先に説明した通り、労災保険といっしょに申告して納付するためです。

⑦で記入した数字は前年度の確定した数字です。これを⑪欄にそっくり転記します。こちらは本年度の見込み額、概算算定内訳となります。 

(5)雇用保険は一部だけの負担です

労働保険のうち労災保険は会社が加入する保険ですから全額会社がその保険料を負担しますが、雇用保険は従業員が被保険者ですので従業員と会社が業種ごとに決められた割合に基づいて負担することになっています。

したがって、雇用保険の保険料のうち従業員が負担するべき金額は給与から控除して会社が預かり、会社が負担すべき金額は会社のお金から、両方のお金を合わせて支払います。

(6)加入対象じゃない従業員がいます

雇用保険は原則、御社にいる従業の全員が加入対象となります。ただし、法律によって雇用保険の適用をうけない人が決められています。これらに該当する従業員分については雇用保険の計算・申告にいれなくても良いし、納付の必要はありません。

もちろんこれらの人の給与から雇用保険料を控除してはいけません。たとえば、会社の役員(登記されている役員のことですが、役員でありながら従業員としての身分も持つ人については従業員として雇用保険加入者になります)、短時間労働者、などです。

もし、雇用保険加入の適否に迷った場合には所轄のハローワーク(公共職業安定所)の担当者に確認すると教えてくれます。

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