給与計算ラボ

支給と控除、社会保険

給料からの社会保険料徴収金額の計算方法について

従業員の方の給料計算には企業によって、様々な手当があるところと、そうではないところなど多様な計算方法があります。しかし、税額の計算や社会保険料、労働保険料等についてはどこの事業所でも法律にのっとって一定の計算をしなければなりません。今回はこの強制的に徴収される各種項目の中でも、年度内に変更があり複雑な社会保険料の計算方法についてお伝えいたします。

社会保険料はどうやって決まるの

社会保険料は標準報酬額及び標準賞与額に基づき計算されます。標準報酬月額は、毎年4月から6月までの給料を元にこの期間の1ヶ月あたりの平均を求めることにより算出されます。一方、標準賞与額は3月を超える期間で支払われる賞与額により決まります。これらの標準報酬月額及び標準報酬賞与に一定の料率を掛けて求められるのが社会保険料の総額になります。基本的にはこの社会保険料の半分が会社負担、残り半分が従業員負担ということになります。

報酬の算定範囲

従業員の方に支払われる給料には各種手当が含まれています。これらのうち報酬の対象となるものは、労務の対象として受けるもの“すべて”が対象となります。よって、通勤手当や住宅手当もこの報酬の範囲に含まれることになります。所得税の計算上、通勤手当は非課税部分がありこの取扱いと混乱する方も多いので注意が必要です。なお、臨時に支給されるお祝い金や出張旅費、年3回までの賞与は報酬の範囲には含まれないことになります。

社会保険料の負担額の計算方法

①給料

社会保険料の負担額の計算にあたっては、全国健康保険協会が公表している各都道府県別の保険料額表に標準報酬月額を当てはめて計算していきます。標準報酬月額はその金額ごとに全部で47等級の区分にわかれており、その等級に該当する部分が会社負担、従業員負担それぞれの保険料になります。なお、40歳以上65歳未満の方は介護保険の被保険者となりますので、「介護保険第2号被保険者に該当する場合」の列と報酬月額の等級の行が交差する部分が保険料の金額になります。

②賞与

賞与については、賞与の額に千円未満の端数を切り捨てた標準賞与額に保険料率を乗じた金額が保険料の金額となります。ちなみに厚生年金保険の保険料率については平成29年の変更まで0.354%ずつ保険料率が引き上げられることになっています。

社会保険料の上限

社会保険料も所得税と同じように報酬額が増えれば負担額が増えていきます。しかし、所得税と違うのは保険料にその上限がある点です。つまり一定額を超えればあとはどんなに報酬額が増えても保険料は変わらないということです。

①健康保険

報酬月額が最高等級の1,175,000円に達した場合の健康保険に関する保険料は、保険料全額で140,602円になりこの金額が上限となります。会社負担としては年間保険料全額約168万円の半分の約84万円になります。 賞与については4月1日から3月31日までの年間合計で540万円までがその上限となり、これに保険料率を乗じて計算した金額を超えて社会保険料が増えることはありません。

②厚生年金

厚生年金の最高等級は報酬月額60万5千円から63万5千円の範囲になります。従って、この部分の厚生年金保険料全額110,533円が上限になります。年間に換算すると厚生年金保険料全額で約132万円。会社負担としては66万円になります。

社会保険料の変更時期

社会保険に関して料率の変更時期は健康保険が毎年4月に、厚生年金保険料が毎年9月になります。基本的に社会保険料は翌月払いになっていますので、5月分と10月分の給料支給の際に従業員の方から徴収する社会保険料の計算については注意が必要になります。

社会保険料を減らす方法

社会保険料は会社や従業員の方にとってもとても大きな負担になります。もちろん社会制度を維持するために必要なものであることは確かなのですが、やはり社会保険料を節約できるならなんとかしたいというのが本音部分ではないでしょうか。

上述したように社会保険料は4月から6月の報酬額で基本的には決まりますので、この期間の報酬額を減らすことにより月々の社会保険料負担を減額できることになります。なお、7月以降に2等級以上報酬月額が上がった場合には届け出が必要になりますので注意が必要です。しかし、給与制度や残業の頻度を考えてしっかりと労務管理をすることにより社会保険料負担を減らせる可能性がでてきます。

まとめ

以上みてきたように社会保険料は一定の計算方法に従って労使折半で負担していくことになります。その上限もありますので役員のかたなど高報酬をもらわれる方についてはこの点も含めてプランニングしていくことが肝要になります。また、社会保険料負担が経営に与える影響も精査しながら、社会保険料負担をどのようにしたら減らせるのかを考えることも経営判断において重要な事項になってきます。
 

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